かつて解散になった宗教法人「法の華」「明覚寺」 ――その背景と統一教会との共通点
旧統一教会をめぐる問題はいまなお議論されており、同教団に対する宗教法人の解散命令を要望する声もある。実際、過去に社会的な問題を起こしたことで裁判所から解散命令が出された団体はある。オウム真理教と明覚寺だ。また、法の華三法行にも検討されていた。オウムを除く2団体はどんな組織で、なぜ解散命令が出されたり、検討されたりしたのか。当時の関係者に尋ねた。(ジャーナリスト・森健/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
4泊5日の「生きざま修行」
あの時のことは振り返りたくないのが正直なところです──。埼玉県に住む吉田登美子さん(75・仮名)は小さな声で言う。言葉を選んで語るのは、かつて「法の華三法行(さんぽうぎょう)」という宗教団体に多額のお金を注ぎ込んでしまったときのことだ。 「総額で言うと、800万円くらいです。当時子どものためにためていた定期預金も解約して、(教団に)入れました。そのせいで夫や子どもたちと大変もめました……」 きっかけは1994年半ば、書店で見つけた本だった。福永法源という人物が書いた本には、天行力でどんな病気でも治ると書かれていた。その当時、吉田さんは毛髪が抜ける症状に悩んでいた。本に挟まれていたハガキを送ると、すぐに教団から電話がかかってきた。
指定された施設に行くと、天仕(てんじ)という出家信者に部屋に通され、足の裏を見せるように言われた。部屋の足裏診断士の女性は、吉田さんの足の裏を数分間眺めると、修行をつめば毛髪の減少など簡単に治ると断言した。だが、続けて「もっと重要な問題がある」と強い調子で言われた。 「先祖に悪い霊があり、それがあなたの人生に影響を及ぼしていると。また、このまま放っておくと、2人の子どもや夫もがんなどの病気になると言われたのです。恐ろしくなりました」 その日は8万円あまりを支払った。だが、数週間後に設定された修行は、そんな額ではすまなかった。静岡県富士市の教団本部で4泊5日、225万円。さすがに高いと吉田さんは思ったが、「いまやらなければどんどん悪くなる、死ぬ可能性も高い」と迫られ、応じてしまった。 数週間後、4泊5日の「生きざま修行」に参加した。道場には数百人の参加者がいた。吉田さんは、あれはつらかったけれど充実感もあったと振り返った。 「修行中は『健康にあふれた毎日です』など、大声で言い続けます。水も飲めません。気を抜くと、天仕が来て大声で叱られる。頭がボーッとして、倒れました。最後の一昼夜は眠れませんでした」 ところが、極限まで追い込まれた状況で、最後に教祖の福永法源から励まされると、「ものすごく解放された」気持ちになったという。涙を流し、充実した気持ちが溢れた。この体験が強く残り、2回目、3回目の修行にも参加した。