かつて解散になった宗教法人「法の華」「明覚寺」 ――その背景と統一教会との共通点
吉田家が紛糾したのは、4回目の修行に入金したあとだった。積み立て型定期預金500万円を吉田さんが引き出していたことに夫が気づき、吉田さんを問い詰めた。預金は、大学進学を控える長男の学費のためにためてきたものだった。夫、長女、長男も呆れ、吉田さんと大喧嘩となった。だが、その時の吉田さんには大学よりもはるかに大事だと思えたという。 「がんになったら終わり。命あっての物種です。だから、私は家族を助けるつもりで法の華に入れていたんです」 夫や子どもたちには詐欺にしか思えなかった。吉田さんは3人に責められ、また、多くの金を注ぎ込んでしまったことの自責の念で、その後数年間、心身のバランスを崩してしまったという。
解散命令前に破産した法の華
法の華三法行が宗教法人として静岡県から認証されたのは1987年。福永だけが聞くという「天声」や、相手の足の裏から人生や悩みを読み解くという「足裏診断」などの方法で活動を始めた。町中では広告のチラシを配り、書籍も販売。福永自身も積極的にメディアに出て悩む人たちの心を捉えた。教団に連絡してきた相手には、がんなどの病気のおそれを迫るなどして、高額な支払いに追い込んでいた。
前述の「修行」のほか、「右脳塾」が380万円以上、福永法源の手形の額縁(解脱法納)で1000万円……。1996年秋、東京の弁護士が中心になって「法の華被害110番」を実施すると、被害は全国に広がっていることが判明。法の華被害対策弁護団が結成された。1996年末から、法の華への返還請求の民事訴訟が全国各地で起きた。 同弁護団の事務局長だった釜井英法弁護士は、被害者1人につき平均500万円ほどの被害があったと振り返る。 「率直に言って、彼らは宗教とはほど遠い団体でした。『足裏診断』は『足裏を見たら、まず『このままだとガンになるよ!』など第一声を吐いてびっくりさせる』というようなマニュアルができていた。お金だけが目的で、教義らしきものもない。心理的に追い込まれてお金を払った人たちは、病気も治らないし、何も変わらない。後で気づいて訴訟に乗り出すことになったのです」