かつて解散になった宗教法人「法の華」「明覚寺」 ――その背景と統一教会との共通点
民事訴訟の原告は全国9地裁で約1200人まで増え、損害賠償の請求額は総額約69億円にのぼった。ただし、警察庁によると、実際の被害者数は約2万2千人(教団発表の信者数は10万人)で、被害総額は950億円とされるなど莫大だった。刑事事件にも発展した。1999年12月、警視庁と静岡県警は東京や静岡など教団施設を強制捜査。2000年5月以降、教祖の福永ほか幹部陣が詐欺容疑で逮捕された。その直前の4月には、福岡地裁で初の民事の判決がなされ、原告側の全面勝利となった。 こうした民事・刑事の訴訟を受け、文化庁では2000年9月の宗教法人審議会で、法の華への解散命令が議論になった。同審議会で宗務課長は、1999年12月の強制捜査やその後の15人の起訴に言及し、公判の状況を見極めながら、<できるだけ速やかに法務省等関係機関との協議を引き続き進めていきたい>と述べている。 だが、実際には解散命令請求には至らなかった。なぜか。請求を出す前に、教団そのものが破産してしまったからだ。釜井弁護士が言う。 「債権者であるわれわれ弁護団は、(民事裁判後に)損害賠償請求額を確保しなければいけない。一方、法の華側がこちらの請求額を支払えるか疑わしい状況も見えてきた。そこで、東京地裁に法の華の破産申し立てをしたのです。同時に、預貯金、不動産などの保全処分をし、法の華に売却させないようにした。その結果、債務超過になるとわかり、裁判所は2001年3月29日、法の華に対して破産宣告を下した。破産宣告は宗教法人法43条2項3号により宗教法人の解散事由になっているため、文化庁が解散命令請求を出す前に、法の華は解散に至ったのです」
重要なのは、この一連の裁判で教義などの宗教性についてはまったく問題になっていないことだという。 「裁判で問うていたのは、『病気が治る』や『足裏診断』など弱みに乗じて、高額のお金を騙し取る詐欺行為であったこと。そこにはマニュアルがあるなど組織的な活動もあった。何を信じるかという、憲法で保障する『信教の自由』に触れるような論点はありませんでした」