宇宙飛行士・野口聡一さんが帰国会見(全文2)ゴルフにツアープロとレッスンプロがあるように
やってて良かった・つらかったと思った瞬間は
日本テレビ:日本テレビの久野村と申します。 野口:はい、よろしくお願いします。 日本テレビ:よろしくお願いします。先ほど宇宙に行かれたら早く地球に帰りたくて、地球に戻ったらまた行きたいとおっしゃっていたと思うんですけども、3回目でも毎回新しい感覚でいらっしゃるのか、ああ、戻ってきたなという感覚になるのかというのが、行ったことがないのでちょっと想像できないところはあるんですけれども、今回3回目の滞在で、一番、やっぱり宇宙飛行士やってて良かったなって思った瞬間と、逆に、ああ、やっぱ宇宙ってこんなにつらかったって思った瞬間と、その2つの瞬間、教えていただければなと思います。 野口:分かりました。ありがとうございます。毎回、なんて言うんですかね、1回ごとに経験としては積み上げられてきているかなと。ですから前回の経験は生かした上で新しい経験がどんどん上積みされているなと。そういう意味では毎回新しい発見があるんですけども、やはり2つあって、これまで実は私、船外活動が場面としては多かったので、あまりロボットアーム、やってこなかったんですけど、今回は本当に1回のフライトでロボットアームと船外活動、それぞれかなり大きな仕事ができたので、ロボットアームはシグナス宇宙船という、アメリカの貨物船ですが、あれをつかまえるという、フリーフライヤーキャプチャーというのが、実は今、回数的には船外活動の機会よりもフリーフライヤーキャプチャーのほうが回数少ないので、そういう意味では非常に貴重なチャンスを、われわれのいる6カ月間で1回しかなかったので、それを任せていただけたのはすごい良かったなと思います。
見たことないような風景とは
もう1つは船外活動で、もちろん毎回それぞれに大変さというのがあるんですけども、今回は前回から15年空いて、非常に長いブランクを経て、訓練はちゃんとやってきましたけど、やはりハッチを開けて、2人1組で外に出す。やはりそこで安全に作業ができるという確証がなければNASAは、JAXAも同じですけど、NASAは絶対に外には出してくれないので、そういう意味ではこれだけ時間が空いていても、日々のいろんな訓練の様子とかを含めて、今、野口は外に出しても大丈夫だという、そういう確証をNASAが持ってくれたのは本当にうれしいことだったなと思いますね。 船外活動中、やはりかなり宇宙ステーションの端の端まで行って、本当にこれまで見たことのないような景色を見ることができたので、そういう意味では今回の4回目のEVAというのは非常に心に残る体験だったなと。今回パッチ4つ、ヘルメットに付けてもらいましたけど、そういう意味では船外活動の経験というのが、ただの量的な、4回目ということだけではなく、質的に非常に深い、自分の内面世界に大きな影響を与えるような、質的な変化をもたらしてくれるきっかけだったかなと思います。 日本テレビ:端の端の見たことないような風景っていうのは、具体的に何が、すいません、見えるものなんですかね。 野口:そうですね、それたぶんあと3時間ぐらい話さないといかないんですけど。なんと言うか、やはり過去3回とか、宇宙ステーションのわりと中心部での作業が多かったので、そういう意味ではもちろん、何かあったときにはいろんな危険にさらされるっていうのは理解した上で、ただ、周りに宇宙ステーションのいろんな人工物がいっぱいあると。手すりがいっぱいあるし、ケーブルもいっぱいあるし、すぐそばに仲間の飛行士も見えるっていう状況の作業がわりと多かったのに対して、サッカー場ぐらいある大きな宇宙ステーションの一番端まで行って、これまでそこに物を取り付けるはずではなかった場所に新しいフレームを、架台を付けるっていうことで、もう本当に手すりのもう一番端っこ、手すりがないところまで今回は行ったときに、やはり目の前に人工的なものが何もないっていうところの景色っていうのは、夜になるとヘッドライトつけてても何も返ってこないわけですよ。もう本当に正真正銘の目の前真っ暗な世界を、要はそのときには自分と下界っていうんですか、自分の外の世界との唯一の接点が指先だけで、目の前は真っ暗、音もない。そして外とのつながりが指先だけっていう体験っていうのは、やはり大きな、これまでにない精神世界の外縁まで押し出されたような、そういう体験だったなと思います。