コロナ禍が去ったときに向けて鉄道事業者はどう対応すべきか 現状の姿から考察する
軒並み輸送量が減少
JR東日本をはじめ、鉄道事業者では列車を使って生鮮食品などを輸送する取り組みを始めている(2019年6月11日、草町義和撮影)。
コロナ禍により鉄道事業者の置かれた環境は大きく変化しました。例えば、国内最大の鉄道事業者であるJR東日本の場合、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響を受けていない2018年度の輸送量が約1376億人キロ(輸送人員×乗車距離の単位)だったのに対し、2020年度は約846億人キロと4割近く落ち込みました。特に新幹線の輸送量が2018年度に対して3分の1に減少したことが大きく響いています。 私鉄を見ても、国内最長の営業キロを誇る近畿日本鉄道は、2018年度の輸送人員が約5.8億人だったのに対し、2020年度は約4.3億人。東京メトロを除けば最も利用者の多い東急電鉄も2018年度が約11.9億人だったのに対し、2020年度は約8.1億人と、JRほどではないにしても2割から3割ほど落ち込んでいます。 鉄道事業者にとって2010年代は「春」そのものでした。リーマンショックや東日本大震災の影響でどん底にあった国内景気はようやく回復傾向を見せ、レジャー需要の拡大や訪日外国人旅行者の急増が定期外利用を後押しします。輸送人員は右肩上がりで増え続け、毎年のように「過去最高益」を記録したと報じられました。
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枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)