都立病院の「独法化」 何が変わるのか?
「独立行政法人」とは?
そもそも「独立行政法人」とは何なのか。 私たちの生活の中で、一人の力ではどうにもならず、多くの他人との共同負担の形を取らなければ成り立たない公的領域がある。例えば、道路、福祉、医療、介護、教育、治安、ごみ処理、防災、環境保護といった領域だ。どれも市場原理の働きにくく「公的資金」を使わないと成り立つのは難しい。 ただ、公的領域だからという理由で全て行政機関が処理すると非効率が生まれやすい。その反省から行政を効率化、減量化し行政の仕事のアウトソーシング(外部化)を図る新たな公共経営の仕組みが必要となり、独立行政法人が生まれた。 行政の機能を「企画立案」と「政策実施」の2つに分けた場合、従来はその全てを行政機関が行っていた。それを立案機能は行政機関が引き続き担う一方、実施機能は独法法人やPFI(民間資金活用による社会資本整備)、指定管理者、企業に託すことで効率化を図ろうという考えだ。
独法化の流れ いつ始まった?
独法化は、国の省庁再編などで注目された2001年の橋本行革(橋本龍太郎政権時の構想がもととなった一連の行政改革)の一環として始まった。これはイギリスのサッチャリズムで出されたエグゼクティブ・エージェンシー(行政の外部化)を手本にしたものだ。 1980年代、新しい公共経営改革の先陣を切ったイギリスのサッチャー首相は「公共部門を縮小し、民間部門に新たなビジネスチャンスを生み、国民経済の活力を高めていく」という政策を掲げた。 公共サービスの多くの分野に民間の経営ノウハウと資金を導入して「効率化」「高度化」「多様化」を図ろうとする改革潮流は、豪州、カナダ、スウェーデン、オランダと広まった。日本には90年代後半から移入され、橋本行革に繋がり、その後、2000年以降小泉政権の発足で「官から民へ」という表現で支持を広める形になった。 日本では2001年、国レベルで57法人が設立されている。2004年に法人化された国立大学(国立大学法人)も広義の独立行政法人であり、現在82国立大学の全てが独法化されている。 地方自治体では2003年7月に制定された地方独立行政法人法に基づき、各々の判断で大学や病院などを中心に独法化が進められている。 総務省の調べだと、都道府県、政令市、市区町村、一部事務組合、広域連合などで独法化が進んでおり、大学(80)や病院(63)、試験研究機関(11)、社会福祉施設(1)、博物館(1)、動物園(1)など、合計で157機関が独法化されている(2021年4月1日現在)。