円安で進む外国人労働者の“日本離れ” 賃金だけでは「アジアに負ける」 労働力確保へ危機
2022年に加速した円安。ドルをはじめ、さまざまな通貨で円の価値が下落した。そこで苦しんだのが外国人労働者だ。日本で働いてもベトナムなど母国への仕送り額が4分の1ほど目減りした人や、せっかく日本語を学んでも働き先にオーストラリアや韓国を選ぶ人たちが増えているという。長期化する円安に伴い、変化にさらされる外国人労働者たち、そして受け入れ団体などを取材した。(文・写真/ジャーナリスト・岩崎大輔/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
給与は約4分の1目減り、母国への送金見送り
千葉市北部のロードサイドのラーメン店。客の多い昼どき、長身の青年がテーブルの食器を手際よく片付け、除菌をし、辛味噌などの調味料を元の位置に戻す。レジや厨房で目まぐるしく動くのはベトナム人のヴァ・ヴァン・ロンさん(25)。休憩時間になると、スマートフォンをのぞき込むのが日課になっている。開いているのは日本円とベトナムの通貨ドンの為替レートのサイトだ。
「為替は毎日チェックしています。でも、円は下がってばかり。いつベトナムに送金したらいいのか悩みます」 ヴァさんは、2019年7月に技能実習生としてベトナム中部のハティン省から来日。日本語能力試験で「日常生活に困らない」レベルである「N3」の語学力を有している。技能実習生時代、とび職でパワハラを受け、転職し大工へ。外食の特定技能試験に合格し、2021年8月から味噌らーめん専門店『蔵出し味噌 麺場 田所商店』で勤務し、主にホールでの接客業務を担当している。 ヴァさんの給与は額面で22万円。日本人と同様に健康保険や住民税、所得税、国民年金保険料などを納め、手取りは18万円になる。ボーナスは年2回各1カ月分が支給される。スマホでできる国際送金サービスで毎月8万~10万円を母国の母に送ってきた。だが、2021年から円が下がりだし、昨年からは送金をたびたび見合わせているという。
「円安が半年以上続いているので、あまり送金せずためていました。『円安が落ち着いたらまとめて送る』と家族にも伝えています。日本に来ているベトナム人の友人も同じで、2~3カ月分をまとめて送るだけでなく、帰国する別の友人にお金を託している人もいます」 ベトナムドンは、ヴァさんが来日し、就労時の2019年9月時点で1円あたり約220ドンだった。だが、その翌年末の223ドンをピークに円が下がりだし、2022年10月には162ドンまで下落した。来日時と比べて約4分の1目減りした格好だ。