円安で進む外国人労働者の“日本離れ” 賃金だけでは「アジアに負ける」 労働力確保へ危機
経済成長著しいベトナムからの人材は“定員割れ”
東京・麹町で、ベトナムを中心にASEAN諸国からの人材紹介事業に取り組むNPO法人MP研究会のベ・ミン・ニャットさんも日本向けの人材確保が難しくなってきたと感じている。 「コロナの前までは『いま募集をしていますか』『次の募集は?』と頻繁に問い合わせがきたのですが、今季はとても少ない。人気のプロジェクトだったんですが……」
MP研究会は、2015年からベトナムの国立大学で建設系を専攻する学生を日本企業に紹介・育成するプロジェクト(日越人材開発雇用促進プロジェクト)を行ってきた。 2019年度は50人の枠に5倍の応募があり、国内63社が209人を採用した。そのうち数人はベトナムにUターン帰国したが、9割以上が日本に残って働き続けている。同プロジェクトでは高度外国人材と呼ばれる技術・人文知識・国際業務の在留資格での就労となる。スキルを学ぶ条件で来日する技能実習生とは異なり、すでに高い技能や知識を有しての来日で、技術者が不足する地方の企業には喜ばれたという。 ところが、新型コロナの影響で来日者数が激減し、受け入れが一旦停止した。さらに2022年以降は円安に。ベトナムからの人材は減り、2022年秋の募集では定員割れになった。 ニャットさんは、ベトナム経済が好調なところでの円安が響いたという。
「いまはベトナム国内でも、よい企業に就職できれば日本円換算で月10万円は稼げます。経済が発展してきたことで、日本との賃金差は縮まりつつあります。一方で、SNSを通じて、よい話も悪い話もすぐ伝わります。『円安で2割も減る』『あそこはブラック企業だよ』と。多額の借金を背負ってまで、日本に行くべきかと踏みとどまる学生が増えています」 円が弱くなると、日本で働く外国人が来なくなる。そうなると、特定技能制度も効果を発揮しにくくなる。現状はコンビニエンスストアや飲食店、建設現場に介護施設、農林業や漁業など、多くの業界が外国人労働者によって支えられている。彼らが日本を選ばないとなれば、日本経済が労働力の面で危機に直面することを意味する。