日本最高齢、16頭の父となったグルメなパンダを無事中国へ――飼育スタッフの試行錯誤と奮闘
命をきちんと見つめて、真剣に考えてほしい
2017年に上野動物園でシャンシャンが生まれてから、カメラを持って訪れる人が増えたと中尾さんは言う。 「シャンシャンの誕生は大きなきっかけになったと思います。パンダに対する共感や興味、愛情が爆発的に上がった印象です」 動物園は子どもから大人まで、多くの人でにぎわうレジャー施設だ。一方で、中尾さんはその役割についてこう語る。 「地球温暖化などによって、どんどん動物がいなくなっています。50年ほど前の動物園は、動物を野生から持ってきたらいいという考え方でした。今はそうではなく、動物園で繁殖しながら命をつなげていく。それをみんなに伝えていきましょう、というのが社会的役割です」
近年、動物の行動生態を理解して、野生に近い環境で生き生きと過ごす姿を見せる「行動展示」のスタイルも全国の動物園に広がってきた。AWでも、パンダの生息地に似せて傾斜を作ったり登り木をつけたりするなど、野生で起こる行動ができるような環境を作っている。 「動物園は、命を預かっています。命をきちんと見つめて、本当に真剣に考えて、この動物がいる、ここにいるということをもっと知ってもらいたい。『かわいい』から始まってもいい。でもそれだけではなく、その奥を考えてもらう場所でありたいと思います」 (取材・文:塚原沙耶)