日本最高齢、16頭の父となったグルメなパンダを無事中国へ――飼育スタッフの試行錯誤と奮闘
国内で他にパンダがいるのは、東京都恩賜上野動物園と神戸市立王子動物園。園の垣根を越えて、情報交換をしている。 「パンダに限らず、動物は一つの園の持ち物ではないというのが今の考え方です。地球上の宝物ですからね。同じパンダを飼っているところ同士で情報交換や交流をして、継続的に、健康な個体を増やしていく。やみくもに頭数を増やすのではなく、遺伝的な多様性も重要です。いろんな遺伝子が残るようにしないと、遺伝的に弱くなります。ですから、血統登録をして統計的な処理をしながら、ペアリングを考えるのです」
「パンダに出会ってよかった」 東京から通うファンの声
永明、桜浜、桃浜が中国に旅立つ前、AWには7頭のパンダがいて、「浜家」として親しまれてきた。中でも2020年11月に生まれたばかりの楓浜(フウヒン)は、来園者の人気を集めている。東京都在住の柴田扶佐子さんは楓浜に会うため、毎月2回、1週間ずつ白浜に滞在しているという。その期間は、10時の開園から夕方までたっぷりと園内で過ごす。 「月の半分は白浜にいますね。夫からはパンダ教の信者だって言われているんです。『パンダのお経、パンダーラでも考えなさい』って(笑)。7年前に初めて夫と二人で来て、パンダさんが岩に寄りかかって竹を食べているのを見て、なんてかわいい動物なんだろうと。神様のいたずらだと思いました。それで私だけ、年間パスポートを作ったんです」
楓浜のために購入したカメラを使いこなしている。 「動画も写真も撮ります。本当に宝物。みなさん子どもや孫の運動会とかを撮るのでしょうけど、私にはいないので。ここに来て知り合ったパンダ仲間が全国に20人くらいいて、いい動画が撮れたらSNSでシェアしたりしています」 出費はかさむが、「お金を残す人もいないから」とほほえむ。ホテルは同じところに泊まるので、従業員とはもちろん顔見知り。 「みんなそれぞれね、幸せのものさしがあると思うんですけど、私は元気と幸せのもとをパンダさんからもらっています。(見ている時は)最高に幸せな時間です。生まれてきてよかったな、パンダに出会ってよかったなと思って」