初の女性選手抜擢も…2大会連続銅メダル獲得の車いすラグビー代表が伝えたもの…「金メダル以上に輝けた」
「たくさんの方が毎日のように熱い応援メッセージをくれて、コートの上で何度も何度も立ち上がって全力でプレーすることができた。プレッシャーはすごかったけど、リオからの5年間の最後の一日を楽しもう、と自分のなかでテーマを設定していました」 キャプテンを担って8年目になる池が、東京パラリンピックを介して車いすラグビーに魅せられたファンからのメッセージを、その力に変えたと明かした。そして池崎はベンチから絶えず「ファイト!」と叫び続けたケビン・オアー監督の存在に感謝した。 「ケビンの言葉にみんなが背中を後押しされて、最後まで走り続けられた。みんながコート上でハードワークを実践し続けられたからこそ、この結果につながった。なので、金よりも輝けるチーム。それが今日の日本だと思っています」 2004年アテネ大会で母国アメリカを銅メダルに、2012年ロンドン大会ではカナダを銀メダルに導いたオアー氏は2017年2月に日本代表監督に就任。彼は、持ち点「3.0」のハイポインターである池―池崎のホットライン、島川の個人技で戦ってきた日本のスタイルに新たな風を吹き込んだ。それはローポインターと呼ばれる、障害の程度が重い持ち点「0.5」の選手を勝負どころで積極的に起用、個人技と融合させるチームプレーだった。 コート上の役割から「守備職人」として位置づけられるローポインターの長谷川勇基(28・ソシエテ・ジェネラル証券)を起用、そして男女混合競技の車いすラグビーでプレー経験わずか3年の倉橋香衣(30・商船三井)を初の日本代表女子選手として抜擢した。 どんなときも笑顔を忘れない倉橋のキャラクターでチームの空気を変えると同時に出場選手の合計点「8.5」に増える女子選手の利点を戦略的に使った。倉橋が敵の攻撃コースを切る、あるいはスペースを埋めることで、守りに隙がなくなり、攻撃の選択肢が増え、敵を当惑させるのだ。今大会では、主に倉橋は、持ち点「2.0」ミドルポインターの羽賀理之(36・ぺプチドリーム)とセットの2枚替えで投入され守備から流れを変える役目を果たした。 女性競技者は、まだ日本で数人しかいないが、試合後、倉橋は「男女混合の競技だということへの理解が進み、女性プレーヤーがもっと増えてくれれば」と話した。パイオニアの自負と笑顔が、金メダルを逃して落ち込むチームに変わらぬ勇気を与えたのかもしれない。 長谷川は、6-5と逆転して迎えた第1ピリオドの3分20秒すぎに、池崎と挟み打ちする形でバットの突進を阻止した。パスに切り替えたバットへさらに長谷川がプレッシャーをかけ、誘発したアバウトなパスを池が懸命に手を伸ばしてスティール。ターンオーバーから繰り出された攻撃から池崎がトライを決めて7-5とした。 リードを初めて2点差に広げた瞬間から日本は主導権を握り続け、最後までオーストラリアに渡さなかった。長谷川は第2ピリオドの終了間際にも執拗に食い下がるディフェンスでバットにトライを許さなかった。30-25での折り返しが決まった瞬間、ベンチで戦況を見つめていた長谷川は満面の笑みを浮かべながら拍手を送っていた。 「コースをしっかりと池さん、池崎さんが切ってくれているので、自分がそこに行けば相手を止められる。チーム全員でしっかりと止め切れたという意味ですごくよかったし、リオよりもローポインターは強化されていると思いますけど、海外の選手に比べて劣っている部分がまだたくさんあるので、次のパリへ向けてまた練習していきたい」