「すごい貧血…原因は練習しすぎ」水泳・大橋悠依の運命を変えたドクターストップ「休むと“やる気がない”と言われ…」輝かしい金メダルに壮絶な過去
9月、競泳女子個人メドレーの第一人者・大橋悠依(29歳)が現役引退を発表した。2021年東京五輪では400mと200mの個人メドレーで、夏季五輪日本女子史上初の2冠を果たすなど世界舞台で輝きを放ち、「大満足の競技人生だった」と笑顔を見せる。だが、長い競技生活の間には貧血や怪我などの苦悩も数多く経験した。引退した今、21年間の道のりを振り返る。【NumberWebインタビュー全2回の1回目/後編に続く】 【画像】“天才少女”と騒がれた中学時代「いまと全然違う?」金メダリスト大橋悠依の秘蔵写真…“同級生”桐生祥秀と仲良しキャンパスライフ、鍛え抜かれた美ボディまで全部見る(40枚超) 「朝、ゆっくりと眠れることがすごく幸せなんです(笑)」 毎朝6時頃起床し、「寝ているのか起きているのか分からない状態で、急いで朝食をとって練習へ行っていました」という現役生活を終えた大橋の日常は、ここ数カ月で大きく変化した。 「たまに仕事との兼ね合いで朝が早いこともあるんですが、圧倒的にゆっくりと過ごせるようになりました」 ラストレースとなった9月の国民スポーツ大会から約3カ月。そろそろ泳ぎたくてウズウズしているのではないかと思いきや、「まったくないです。寂しさもまったくありません! もうお腹いっぱいです!」とあっけらかんと笑う。 そうきっぱりと言い切るのは、21年におよんだ競技生活をまっとうできたという自信があるからだ。現役時代に比べると表情も穏やかな印象だ。 「競技をしていた頃は、次の試合に向けて、“やらなきゃいけない”とか、“どんな練習をやろうか”ということをいつも考えていたので、慢性的に不安を抱えていました。そもそも、私、心配性なので。現役から退いた今、あらためて、私って本当に四六時中、水泳のことを考えていたんだなと気づかされているところです」 東京五輪2冠など輝かしい経歴を持つ彼女だが、実は大学1年生の頃に、現役を続けられるかどうかを左右するほどの大きな転機を経験している。
東洋大時代、突然の不調に…
滋賀県彦根市で生まれた大橋は県内のスポーツ強豪校、草津東高へ進学。当時はまだ目立った成績を残せていなかったが、北島康介ら日本競泳界のトップ選手を育ててきた名将・平井伯昌コーチに見いだされ、2014年に東洋大学へ進学した。 日本代表を目指し、高校時代と比べると練習量は2倍になった。そんなハードなトレーニングをこなしていたある日のことだった。2015年3月初旬、大橋は突然、身体の不調を感じるようになった。 「いつも通り練習しているのになんでタイムが遅いんだろう。体も重くて苦しいし」 練習開始早々、そして試合でもスタートした直後にレースのラストのような疲労を慢性的に感じるようになった。いつも通り泳いでいるのにスピードがまったくでない。大学2年になった同4月の日本選手権では200m個人メドレー予選で40人中最下位に終わった。通常時から10秒以上タイムが落ちることもあった。 「当初は自分の努力が足りないのかなと思いこんでいました。でも、体のケアをしても全然よくならなくて。そんな状態が半年ほど続いていたんです」 周囲からは、不調なのは練習に身が入っていないからと誤解されることもあった。大橋自身も「自分が一生懸命やっていないんじゃないか」とさえ思うようになっていた。 「一時期、1週間くらい泳がずにマネージャーとしてプールサイドでタイムを計ったりしていたこともあったんです。それは休養というよりも、人が頑張っている姿を見て私のやる気を促そうとするというような意味合いだったと思います。実際、『やる気がないんじゃないか』『なんで一生懸命やらないんだ』というようなことを言われたこともありました。そう言われることがすごくつらかったですね」
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