「すごい貧血…原因は練習しすぎ」水泳・大橋悠依の運命を変えたドクターストップ「休むと“やる気がない”と言われ…」輝かしい金メダルに壮絶な過去
競技人生で最も孤独を感じた時間
大橋は次第に塞ぎこむようになった。ネガティブな発言や考えが先行してしまい、チームメイトに迷惑をかけるのではないか。そんな思いから、練習に行っても誰とも話をしなかった。身体の調子も一向に改善せず、側から見れば、しっかりと休養を取る選択肢もあっただろう。それでも、大橋は止まることを選ばなかった。 「それはまったく頭になかったですね。インカレも控えていたので、たとえ不調でも、どうにかしてそこに向かって行かなければいけないと練習を続けていました」 このとき、原因が身体の中にあるとは本人も、そして周りもまったく疑っていなかったという。泳ぎのせいなのか、それともメンタルのせいなのか。モヤモヤが消えない。 大橋曰く、競泳人生のなかで最も孤独を感じた時間だった。 その年の秋、思いがけないことから不調の原因が分かった。 インカレを控えた頃、寮の近くを自転車で走っていたとき、転倒して怪我を負った。その後、足の股関節のリンパが腫れたため整形外科を受診することになったのだが、そこで医師から予想外の言葉を聞くことになる。 「傷口からバイ菌が入って腫れたかもしれないからと採血したんです。そしたら病院の先生に、『すごい貧血だよ。紹介状を書くからすぐに血液内科を受診してください』と言われて。精密検査をしたら、ヘモグロビンの数値が異常に低かったんです。一般の方なら日常生活ができないほどの重症だったんですが、私の場合はアスリートで体力があるから人並みに動けてしまって気づかなかったんだろうということでした」 医師の診断は「極度の貧血」だった。 女性アスリートは月経で鉄分を喪失するため、男性よりも鉄欠乏になりやすく、貧血になりやすい。特にアスリートの場合は激しいトレーニングによって鉄分の供給が追いつかず、鉄欠乏性貧血に陥る。大橋も競技に支障が出るほどの貧血に陥った。 ただ、不調の原因が解消されたことのほうが大橋にとっては大きかったのかもしれない。モヤモヤしていた心がスッキリと晴れ、謎が解けて脱力するような安堵感を今でも鮮明に覚えている。
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