こがようこさんの絵本「へっこ ぷっと たれた」 わらべうたで言葉だけじゃないやりとりを大事に
読み聞かせは親子で過ごす大事な時間
――絵本の巻末には、「わらべうた」の遊び方も書かれていて、赤ちゃんと触れ合いながら楽しむことができるのもうれしい。 「わらべうた」は、昔は赤ちゃんの成長を知る目安にも使われていたと聞きます。例えば、「おつむてんてん」と、頭を触りながら唱える「わらべうた」があります。赤ちゃんって生まれたばかりの頃は頭の上まで手はあげません。でも、大人が「おつむてんてん」とあやす仕草を見ていくうちに、ある時期からマネをするようになる。そうやってだんだん手を頭の上の方に伸ばすことに気づくのですね。大人も、「ああ、手がここまであがったなあ」と赤ちゃんの成長を感じるわけです。「わらべうた」は生活の中から生まれてきたもので、そういう先人の知恵は素晴らしいと思います。絵本を読みながら、体に触れたり、嫌じゃないところを嫌じゃないようにそっと触ってあげたりして、遊んでほしいですね。 赤ちゃんをあやすときや寝かせるときなどに「トントン」とするリズムも、「わらべうた」のリズムにあっています。それは心臓が落ち着くリズム、お母さんのお腹の中にいたときから感じていたリズムなんじゃないかなと思っています。子育てしていてイライラするようなときも、自分自身がゆったりした気持ちで「わらべうた」を唱えながらトントンすると、赤ちゃんも穏やかになっていきます。そういうときこそゆったり、ゆったり唱えてほしいと思います。 ――読み聞かせは、子どもが小さなうちだけでなく、長く続けてほしいと、こがさんは言う。 自分で読むのと、読んでもらうのは全く違うものなので、ぜひずっと読んであげてほしいです。私は娘たちが6年生になるまで読んでいました。それはたぶん、子どもたちがというよりも、私が読みたかったんですけど(笑)。今は、娘たちも自分の子どもに絵本を読んであげるようになりましたが、私が読んでいた本は何も覚えていなくても「あの時間はすごく好きで楽しかった」「あの時間はケンカしなかったよね」と話しています。何を読むかではなく、一緒に過ごす時間が大事なのであって、読書好きになるというのとは、またちょっと違うかなと思います。 ――今後もこのシリーズを続けていきたいと言う、こがさん。一方で、赤ちゃんがお腹の中にいるときから語りかけることの大切さについて伝える活動もしている。 お母さんのお腹の中にいるときから、いっぱい語りかけてほしいと思っています。でも、まだ目の前にいない赤ちゃんに語りかけるのは、難しいと感じる人もいるかもしれません。そんな方にも語りかけてみようと思えるような絵本を作りたくて。お母さんお父さんの言葉で自然に語りかけてもらえる絵本をと考え、『おなかのなかのあかちゃんへ』(絵・くのまり/岩崎書店)を書きました。マタニティ期のお母さんとお父さんの心が寄り添えるきっかけ作りにもなればと思っています。ご一緒に読んでもらえるとうれしいです。 <こがようこさんプロフィール> 絵本作家、紙芝居脚本家、絵本コーディネーター、語り手。30年以上にわたり様々な場所でおはなしを届ける活動を続ける。幼児教室講師・保育士・自らの子育ての経験から、0・1・2歳児とその保護者に向け、子育て支援に長くかかわる。紙芝居『ころん こっつんこ』(童心社)で第57回五山賞受賞。絵本に「馬場のぼる へんてこあそびえほん」シリーズ、「せかいのあいさつ」シリーズ(以上童心社)、「語りかけ絵本」シリーズ(大日本図書)、『おなかのなかのあかちゃんへ』(岩崎書店)、『どーこかな?』(瑞雲舎)、などがある。 (文:坂田未希子)
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