JR東海はなぜ“終電繰り上げ”しないのか 東京・大阪とは異なる“愛知の特性”とは?
JR東日本は、新型コロナウイルスの感染拡大によって飲食店の利用者が減り深夜帯の乗客が減ったことや、現場作業員の労働環境を改善する、との目的で3月13日からの最終列車の時刻の繰り上げを発表した。JR西日本も春のダイヤ改正で繰り上げるという。しかし、JR本州3社の中でJR東海だけは終電の繰り上げを断固として否定する。この対応の違いを掘り下げてみると鉄道会社の問題というより、愛知・名古屋地域の特性が見えてくる。
そもそも少ない深夜の鉄道利用者
「終電を早めれば客は早く帰る。コロナでただでさえ大変なのに、打撃は間違いない」(飲食店員)、「コロナでライフスタイルが変わる。家族と過ごす時間も増える」(鉄道利用客)――。 メディアでも多くの賛否が紹介された終電の繰り上げ。まずは、本州のJR各社の主な路線の平日の終電時刻と予定されている繰り上げ時間をざっと確認しておく。 【JR東・山手線】 ■東京駅発の外回り(時計回り)午前1時3分→17分繰り上げ予定 ■新宿駅発の内回り(反時計回り)は午前1時00分→19分繰り上げ予定 【中央線・総武線】 ■東京駅発の中央線下り快速午前1時35分、総武線・御茶ノ水駅発津田沼行き午前0時41分→それぞれ20~30分程度繰り上げ予定 【JR西・大阪環状線】 ■大阪駅発の外回り(時計回り)が午前0時33分→18分繰り上げ ■内回り(反時計回り)は午前0時11分→減便。繰り上げはなし 【京都線・神戸線】 ■大阪駅発の京都線、午前0時31分→21分の繰り上げ ■大阪駅発の神戸線、午前0時28分→24分の繰り上げ
一方のJR東海は、名古屋駅発の東海道線下りが午前0時2分、上りは午前0時20分、下りのみの中央線は午前0時20分で、首都圏や関西圏の終電より早いと言える。東京、大阪と比べ、名古屋駅発の在来線は深夜帯に本数が少ないのが特徴だ。新幹線の最終電車(東京発)が名古屋駅に到着するのは午後11時49分。その前の電車は午後11時24分着となっている。東海道新幹線を中心に経営方針を決めるJR東海では、新幹線の終電に連動してほとんどの在来線は終わってしまう。 「(終電繰り上げは)予定していません。もともと東京圏とかと比べれば、終電は早い。実態としてご利用が少ない。やはり、夜遅くの活動量というところは首都圏に比べれば数が少ない。それを受けて輸送を組み立てている」 昨年10月28日、名古屋であったJR東海の定例会見で、金子慎社長は終電繰り上げの可能性を問われ、きっぱりと否定した。さらに、中部圏での需要の低さについて、「東京ほど残業や飲食をして遅くなる人が少ないということか」と問われると、「数を分析したことはないが、想像すると、いまおっしゃられた要素もあると思う」と述べたのだった。 つまり、JR東海の在来線は東海道新幹線の発着に合わせたダイヤになっており、夜間の運行もその需要には応えるものの、より遅い時間帯の便はもともと多くないのだ。 首都圏では、JR東の終電繰り上げにともない、私鉄各社でも最終列車を早める計画が発表されている。しかし、中部圏最大の私鉄、名古屋鉄道(名鉄)の終電も、東京、大阪と比べるとこれまたそもそも相当、早い。名鉄の名古屋駅発の最終電車は、中部国際空港行きが午後11時35分、岐阜行きが午前0時7分。名鉄は名古屋駅から10以上の行き先があるが、これが名古屋駅発で最も遅い列車となり、“午後10時台の最終列車”もある。