阪神の藤浪がぶち当たった”第二の壁”…2軍で再生可能か、残された選択肢は”沢村方式”のトレードしかないのか?
阪神が14日、前日13日に甲子園で行われた広島戦で3回3分の1を投げ5安打5失点と結果を残せなかった藤浪晋太郎(26)の登録を抹消した。7月23日に今季初先発し、8月21日のヤクルト戦で692日ぶりの勝ち星を挙げたが、以降は勝てず8試合の先発で1勝5敗、防御率5.87の成績しか残せていない。藤浪の再生はなるのか。巨人からロッテに電撃移籍して復活の兆しを見せている沢村拓一(32)と同じ方式のトレードしかないのか。
2試合続けてKO降板
藤浪が“第二の壁“にぶち当たった。5日の巨人戦で11失点と炎上。ローテー生き残りの背水登板となった13日の広島戦でも4回一死満塁で交代を告げられ、ついに14日、登録抹消となった。 広島戦では、なぜか立ち上がりから全球ストレートしか投げなかった。初回にヒットと四球で一死一、二塁にされると鈴木誠也にもストレート勝負。さすがに狙われた。3球目の154キロストレートをレフトスタンドへ。シュート回転した、ど真ん中のボールだった。球速は出ている。だが、25試合、110打席もタイムリーのなかった不調の4番打者を打ち損じさせるほどの威力はなかった。ここから藤浪のピッチングが一変。スライダー、フォークを軸にする変化球主体の組み立てに変わった。右打者にボールが抜けないようにストライクの取れるボールを探したことと、読みの裏をかこうとしたのだろう。だが、4回にまたピンチを招き、一死から坂倉、曽根に連打を浴び、代打の長野を歩かせて満塁となったところで矢野監督は腰を上げた。 「勝った流れでジャイアンツ戦にいきたかった。全員を注ぎ込んででも勝つつもりだった」と15日からの巨人戦を見据えて、勝ちに徹していた矢野監督からすれば、続投の選択肢はなかったわけである。裏を返せば藤浪への信頼度の低さをあらわしていた。
8月21日のヤクルト戦で約2年ぶりの勝ち星を手にして以来、3試合連続で5イニングが持たない。阪神OBでもある評論家の池田親興氏は、「第二の壁にぶち当たっている」という見方をしている。 「ステップを少し狭くコンパクトなフォームにマイナーチェンジしてまずストライクが取れるようになった。抜け球やバラつきも、これまでよりは減った。そして勝ち星もついた。第一段階はクリアしたが、あえて制御していたストレートを徐々に強く投げ、ローテーで安定した結果を残すという、次のステップで壁に打ち当たった」 その“第二の壁”の理由は、昨秋から元中日で臨時コーチを務めた山本昌氏や、米の科学的分析を元に指導する「ドライブライン・ベースボール」の協力を得て取り組んできた新フォームの狂いだという。 「広島戦ではスライダーを多投したが、腕がスリークォーターよりも下がり、いわゆる横ぶり状態になっていた。その状態でストレートを投げると、腕が体から離れて制球が安定せずボールが抜けやすくなり球速は出ていてもボールがシュート回転してバッターが捉えやすくなる。今季初めて1軍に戻ってきたときは、そこが改善され、軸、ステップ、下半身、上半身、リリースというピッチングの主要なメカニズムのタイミングがあっていた。だからストライクを取れていたが、また悪いときの藤浪に戻ってしまった。おそらくゲームの中で結果を出さねばならないことに頭がいき、ボールを投げてはダメだ、抜けて当ててはダメだ、という心理が強く働きすぎたのだと思う。こういう状態を作らないことが、すなわち安定感ということになるのだろうが」 藤浪は、1軍復帰後もストレートの質を問われていたが、そこに手をつける次の段階へ行く前に、再び躓いてしまったのである。 広島戦後に矢野監督は「もっともっと成長できるし、まだまだ才能をもっているピッチャー。思い切ったピッチングをしてくれたら」と語っていた。高卒1年目から3年連続2桁を勝った投手である。そのポテンシャルは誰もが認めている。だが、丸2年、低迷が続くようでは、首脳陣、フロントも我慢の限界がくるのかもしれない。 では藤浪が復活するにはどうすればいいのか。 2軍調整に意味があるのだろうか。