なぜ阪神藤浪は692日ぶり復活勝利を手にすることができたのか?
阪神の藤浪晋太郎(26)が21日、神宮球場で行われたヤクルト戦で、実に692日ぶりとなる勝利を手にした。6回3分の1を投げ、2本の被本塁打を含む6安打で4失点したが、リードを守りきり、自らのバットで38イニングぶりとなる先制点を叩きだすなど投打に活躍。チームの連敗をストップした。
「長かった」「やっと勝てた」
その瞬間はベンチから黒いマスク姿で見届けた。クローザーのスアレスが粘る青木宣親をショートゴロに打ち取り、送球がボーアのファーストミットに収まるのを確認すると右手でガッツポーズ。続けて自らを祝福するかのように拍手した。 ベンチ前の勝利の儀式に並ぶ際、上本博紀と岩貞祐太に声をかけられ、やっと溶けたような笑顔を浮かべた。2018年9月29日の中日戦(ナゴヤドーム)以来の勝利。心から笑ったのも2年ぶりだろう。 敵地でのヒーローインタビューに藤浪が登場すると、虎ファンだけでなくヤクルトのファンも暖かい拍手で、長身の背番号「19」を迎えた。 「2年間くらい勝てなかったので長かったなあという気持ちと、ずっと勝てないピッチングが続いていたので、やっと勝てたかという気持ちが一番強いです」 藤浪は正直な心情を吐露した。 今季の初登板は7月23日の広島戦(甲子園)。好投を続けていたが、ピレラに逆転満塁本塁打を打たれて負け投手となり、ここまで4戦4敗と勝ち星から見放されてきた。ゲームは作ってきたが、勝利が伴わなければ、目に見えないプレッシャーが増す。神宮に響いた藤浪の大きな声は、長い呪縛からやっと解き放たれた証だったのかもしれない。 なぜ藤浪は復活勝利を手にすることができたのか? 「勝ち星が欲しいという気持ちはもちろんあるんですけど、そういう欲を持ちながら、そういう気持ちも抑えつつ、力まないように自然体で入ろうと思ってマウンドに上がりました」 藤浪は何があっても崩れなかった。 山田哲人を引っ込めてまでズラリと左打者を並べてきたヤクルト打線に対して、その立ち上がり、先頭の坂口智隆へのフォークがワンバウンドとなり足に当たった。去年までの藤浪なら、ここからストライクが入らなくなる。だが、続く宮本丈に対してストライクを先行させてレフトフライに打ち取り、青木にはストレートを全球ストライクゾーンに投じて三球三振。村上宗隆への4球目に、梅野隆太郎が思い切り腕を伸ばしても捕球できない抜け球があり、走者を二塁に進めたが、藤浪の“悪癖連鎖“は起こらない。最後は154キロのストレートでスイングアウトの三振に斬ったのである。