安倍首相が辞任 自民党総裁選とは? 坂東太郎のよく分かる時事用語
2012年、2018年の総裁選では?
今回の総裁選は「簡易型」の方式が有力だと取り沙汰されています。それを選ぶ表向きの理由はともかく、一部に「石破茂氏潰しが目的では」という懸念が石破氏支持ではない国会議員からも上がっています。そこで原則を曲げたら新総裁の正統性が疑われて来年10月までに必ず行われる衆議院選挙の結果にも響きかねないと。 そう憶測されても仕方ない事実が過去の総裁選でみられました。2012年(総裁任期満了に基づく通常型)では石破氏が党員・党友票で安倍氏を圧倒。決選投票で安倍氏が逆転勝利したものの、「地方軽視ではないか」との反発もあってか安倍新総裁は石破氏を党ナンバー2の幹事長に遇したのです。 両氏の一騎打ちとなった2018年総裁選も安倍氏は勝ったとはいえ、党員・党友票では石破氏に肉薄されました。 党員・党友の声を総裁選に反映しようという試みは、国会議員の派閥による合従連衡のカネまみれ選挙(総裁選は公職選挙法が適用されない)などと指弾されたのを受けた近代化の一環でした。1978年には党員・党友票だけの予備選が先行して実施され現職の福田赳夫候補がまさかの敗北を喫して本選を辞退。大平正芳新総裁が誕生しました。 2001年の総裁選も大本命と目された橋本龍太郎候補が、先行して開票結果が出た党員・党友票で小泉純一郎候補に圧倒されて潮目が変わり、逆転勝利を許したのです。 現行の方式だと党員・党友票の結果は国会議員票と同時に発表されるため、後者に直接の影響は与えません。それでも「簡易型」にこだわるとしたら、かつての予備選導入の引き金となった永田町の論理だけで決まる密室政治のそしりを受けかねないでしょう。 党員・党友といっても100万人あまりで、全有権者の数にはほど遠い少なさ。かなりコアな自民党支持者と推測されます。それでも永田町に蝟集(いしゅう)する関係者よりは地方の実情を踏まえていましょう。