安倍首相が辞任 自民党総裁選とは? 坂東太郎のよく分かる時事用語
「ポスト安倍」の候補者は?
前述のように、今回の総裁選は安倍総裁の辞任による実施で、任期は安倍氏の残余期間である約1年(総裁任期は3年)。その間に解散総選挙を打たないと任期満了が迫ってきます。したがって「選挙の顔」としても期待されるはず。 総裁選出馬には「推薦人20人」が必要ですが、有力候補といえば、まず石破氏に注目が集まります。ただ過去2回の結果で分かるように国会議員票では低迷しており、「簡易型」の総裁選だと厳しい戦いを強いられます。もし簡易型と決まれば「抗議の不出馬」に出る可能性があります。そうなると不穏な気配が漂いそうです。 安倍首相が第2次政権以降で「外務大臣→党政調会長」と厚遇した岸田文雄政調会長(岸田派領袖)も有力候補ですが、日の当たるコースを歩みながら今ひとつ国民的人気に欠け、2018年の総裁選でも出馬を模索しながら結局見送りを決めるなど、ひ弱さがかねがね指摘されています。しかも狙っていたはずの「禅譲」も安倍氏から結局言質を取れず仕舞い。 麻生太郎副総理兼財務相(麻生派領袖)とともに第2次安倍政権を一貫して支えてきた菅義偉官房長官(無派閥)も有力候補。改元発表の際は「令和おじさん」として知名度もアップしました。ただ彼の場合、その経歴が仇になる恐れも。「安倍亜流」とみなされかねません。 麻生氏自身は立候補しないと言明していますが、同派の河野太郎防衛相は支援が集まれば立候補もあるかもしれません。 他の有力派閥のうち安倍氏の出身母体で最大派閥である細田派は「1回休み」の方向ながら、下村博文選対委員長や稲田朋美幹事長代行が意欲を見せています。竹下派は領袖の竹下亘氏が体調不良を抱えていますが、派内には茂木敏充外務相らの実力者がいます。二階派は領袖の二階俊博幹事長自身が安倍首相辞任表明後のスーパーパワーと化していて、菅氏擁立に動く気配。他にも以前から出馬の意向を隠さず「推薦人20人の壁」に阻まれていた野田聖子氏(無派閥)も今度こそ勝負できるか注目されています。
----------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など