安倍首相が辞任 自民党総裁選とは? 坂東太郎のよく分かる時事用語
安倍晋三首相が8月28日、辞任の意向を表明しました。現状は自公連立政権で自民党が最大与党ですから、首相=自民党総裁です。安倍首相は当然、総裁も退くことになるので後任を決める総裁選が行われ、その後、9月中旬頃に召集される臨時国会での首相指名選挙で新総裁が新首相に選出されるでしょう。 【表】安倍首相「新体制移行、このタイミングしかない」 今後は「一議員として」
党大会の「通常型」か両院総会の「簡易型」か
自民党則6条の規定及び同党総裁公選規程によると、原則は党所属国会議員票(今回は394人分)と全国の党員などが同数(計394票)参加して総裁を選出します(計788票)。今回のケースは任期満了ではなく、現職の安倍総裁が任期を1年ほど残したまま退く「任期中に欠けた場合」(党則6条2項)。それでも「原則として」は前述の通り、党の最高機関である党大会を開いて総裁選が行われます。 例外は「特に緊急を要する」(同)場合で、「両院議員総会」(党所属国会議員で構成)での選任が可能になります。この場合の選挙権は国会議員票(394人)に「都道府県支部連合会代表各三名」(6条3項)が加わります。「3人×47都道府県」で141票。国会議員票と合わせて計535票で決するのです。 簡単に違いをまとめると、国会議員票の部分は同じで、「原則」たる通常の総裁選の形式「788票」だと全国の一般党員などが選考に関われるし国会議員票と同数なのに比して、両院議員総会で決する535票の「簡易型」だと国会議員以外は県連代表しか投票権を持たず、いわゆる地方票の割合も小さくなります。 ちなみに党大会ではなく、両院議員総会で総裁が選出されたのは、1998年の小渕恵三氏、2001年の小泉純一郎氏、07年の福田康夫氏、08年の麻生太郎氏などの例があります。
キーワードは「党員投票」
原則で想定される通常の総裁選の394票に関われる「党員など」の内訳をみていきましょう。 まず「党員」。20歳以上で日本国籍を持つ人が対象で、党費(ポピュラーな一般党員が年4000円)を直近2年続けて納めている人たちです。前回2018年の総裁選では特例として18歳、19歳の党員らにも選挙権が付与されました。 「党友」とは自民党を支援する政治団体「自由国民会議」などの会員を主に指す言葉となります。芸能人や研究者、文化人といった立ち位置にいる人の中には党派色が出ると仕事に支障を来す場合が考えられるので、党籍を持たないまま会費を支払って実質的に自民党を応援するわけです。数は非公開ですが党員よりはるかに少ないと推測されます。 通常の総裁選の場合、党員・党友が誰を選ぶかを考える時間や党本部の総裁選挙管理委員会に結果が届くまでの時間を簡易型より多く見積もる必要があり、総裁選の告示日(正式スタート)から12日以上の選挙期間を設けなければなりません。その間、党員・党友は郵送による投票、または党が設置した投票所に行くかのどちらかで投票日前日までに意思表示します。 開票は、地方組織である都道府県支部連合会(都道府県連)が投票日に行い、得票数に応じ各候補者に「ドント方式」(※)で配分します。 一方の国会議員は投票日に直接投票します。この時点で「党員・党友票」の結果は公表されていません。国会議員投票が終わるとただちに開票され、「党員・党友票」と同時に集計結果が発表されます。今回は合わせて788票の過半数(国会議員すべてが投票し、かつ皆が有効であるとする)を得た候補者が当選です。 開票の結果、1回目で過半数を得た候補がいなければ上位2人(辞退はないと仮定)によって決選投票がなされます。国会議員票(394人)は再度投票し、都道府県連各1票の47票が割り振られます。通常型の場合なら1回目に全国集計した党員投票を上位2人で再集計し、今度はドント方式でなく、都道府県ごとに得票の多い候補が1票を獲るのです。国会議員票と都道府県連票の合計で1票でも多い方が当選となります。 (※)…ドント方式とは、各候補者の得票数を1、2、3、4といった整数で順に割っていき、得られた数の大きい順に各候補に票を配分していく方式。