尾身会長、首都圏の宣言解除は「より慎重に」 リバウンド防止は「コンセンサス」
政府が26日、大阪や愛知など6府県の「緊急事態宣言」の今月末での解除を決めたことを受けて開かれた記者会見で、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、3月7日に期限を迎える首都圏の宣言解除について「より慎重に判断するべき」との見解を示した。 【会見動画】「宣言」先行解除 尾身会長「もろ手を挙げて賛成ではなかった」
●変異ウイルスに強い懸念
尾身会長は今回の6府県の先行解除について「最終的には『条件付き解除』だと思う」と述べ、諮問委員会での議論で政府からの解除提案に慎重論が強く出たことを明かした。 懸念は尾身会長を含めた多くのメンバーから表明された。6府県では、感染状況の指標が宣言解除の目安となる「ステージ3」を下回って「ステージ2」に近づき、医療体制への負荷でも「ステージ4」を脱却しているが、分科会が昨年8月にステージの考え方を発表した時点では「変異株がなかった」ため、こうした新しい要素の登場を受けて「慎重にやった方がいい」との見方で共通したという。 特に変異ウイルスについては「ほぼ間違いなく変異株が既存株に置き換わっていく。『増える可能性がある』ではなく、もうそのプロセスに入っている」と強い懸念が示された。感染力が既存ウイルスより強いとされていることから「よほど注意しないと、解除した途端に感染拡大ということになる。それは絶対に避けなければならない」と警戒した。 また若い世代は、緊急事態宣言といった「国のはっきりした決定で行動が変容する」との研究結果をもとに、解除によって感染防止対策への意識が緩むことへの懸念も出たという。 もとより現在の感染者数の水準は「下がったといっても、8月の第2波の下がりよりもまだ高い」と尾身会長は述べ、感染レベルは依然として高いとの認識を示した。
●“再延長”の可能性にも言及
東京をはじめとする首都圏1都3県では、3月7日まで宣言は継続される。菅義偉(よしひで)首相はこの日の全面解除を目指すが、尾身会長は解除の判断について「東京を中心とする首都圏は、他の地域に比べてより慎重にやる必要がある」との見方を示した。 その理由として、東京を中心とする首都圏は、▽人口密度が高い▽地域が広い▽人流が多い▽人々の匿名性が高い――ことなどを挙げた。特に匿名性については、これがクラスターを追いにくい要因になっているといい、「感染者の数が圧倒的に多いだけじゃなく、なかなかクラスターの起点、感染の起点が見つかりにくい状況もある」と指摘した。 この日の諮問委員会で、解除後に感染の再拡大(リバウンド)が起きることへの危機感は「全員のコンセンサス」だったという。宣言解除の条件として、尾身会長は「リバウンドが起きないような方法でということ。感染者数はなるべく下げた方がいい」と説明し、「関東の解除は変異株のこともあるし、説明がつくような判断をするべきだ」と述べた。 会見に先立ち開かれた衆院予算委員会の分科会では、3月7日で宣言を解除できるか、できないかについて「両方の可能性がある」と再延長の可能性にも触れている。