【Q&A】新型コロナ「変異ウイルス」って何?
新型コロナウイルスをめぐり、英国、南アフリカ、ブラジルなどで変異したウイルスが見つかりました。日本でも変異ウイルスによる感染者が確認されています。どのように変異が起こるのでしょうか。また「変異ウイルス」は従来のものと比べて何が違うのでしょうか。米国の国立研究機関の博士研究員で、ウイルス学・免疫学が専門の峰宗太郎医師に聞きました。 ※2月25日時点の情報に基づく内容です
Q:ウイルスが変異するってどういうこと?
新型コロナウイルスは脂質でできた二重の膜に覆われており、その中にウイルスの設計図が書き込まれたRNAと呼ばれるものがあります。この設計図が書き換わることでウイルスの性質が変わることがあり、これを「変異」と言います。
Q:「変異種」「変異株」とも言うの?
報道などでは「変異種」という表現がされますが、「種」が変わると言うことは新型コロナウイルスがインフルエンザウイルスに変わるようなことを指します。今回の新型コロナウイルスでは種が変わっていないので、この表現は誤りです。 「変異株」は、ウイルス学的な特徴が明らかに変わったときに用いられるため、こちらも実際には適切ではありません。ウイルス学者などは変異したウイルスを「変異体」(へんいたい)と呼びます。また変異したウイルスの子孫までまとめて呼ぶ場合には「同源体」と言います。英語で「バリアント」というのが無難かもしれませんね。
Q:ウイルスが変異するのは珍しいこと?
ウイルスは感染していく度にどんどん変異します。例えば、私がこのウイルスに感染すると私の体の中にも変異ウイルスが出てきます。注目されていないだけで、世界中には何万種類も変異ウイルスがあると思っていいのです。 その中でも、特に性質や振る舞いが変わったものに人が注目し、監視や研究の対象となり、話題にされているだけです。
Q:ウイルスが変異すると何が問題なの?
問題となる恐れのあるウイルスの変化は、(1)伝播性(感染力)の上昇(2)病毒性(重症化率、致死率)の上昇(3)ワクチンからの逃避や薬剤への耐性獲得――の3点です。
Q:英国の変異ウイルスは「感染力が1.7倍」?
英国で確認された変異ウイルスは当初、伝播性が70%上がったのではないかと推測され、ジョンソン首相もそう発信しました。しかし、その後の研究で上昇幅が「50%程度」や「30%程度」という結果が出ています。伝播性は増していると思われますが、その大きさは何も確定しておらず、不明なのが現状です。 病毒性の上昇ですが、英国の変異ウイルスは30~35%致死率の上昇が認められたという報告があります。ただ、もともとの致死率が1%くらいとリスクそのものが非常に小さい。1%が1.3%になったら「30%上昇」となる訳ですが、確定するにはまだ検討が必要なうえ、インパクトは大きくありません。 3つ目がワクチン逃避です。ワクチンを打つことにより、ウイルスが細胞の中に入って細胞に感染させるのを妨げるのですが、その妨げが効かない変異を持ったウイルスが出てきています。これは特に南アフリカ・ブラジルの変異ウイルスで危惧されます。英国の変異ウイルスに対してファイザー社のワクチンを試したところ、極端に効き目が低下することはありませんでした。