日銀・黒田総裁会見12月17日(全文1)若干の円安はわが国経済にプラスに作用
必需品に関する一般の人の副作用が膨らむ恐れはないか
共同通信:共同通信の【モリナガ 00:15:53】と申します。よろしくお願いいたします。今の質問にちょっと重なる部分があるんですけども、一方で来年以降、欧米の中央銀行と政策のスタンスの差ができると、どうしても最近の円安が金利差でさらに進むとか、そういった輸入物価の上昇につながったりとか、そういう必需品に関する一般の人の副作用みたいなものが膨らむ恐れもあるんじゃないかと考えますけども、その辺りはどういうふうにお考えでしょうか。 黒田:現在の輸入物価の上昇の大きな要因は、ご承知のように、石油、天然ガス、その他、エネルギー資源価格が国際的に非常に上昇していると。で、わが国はエネルギー、石油とか、天然ガスっていうものはほとんど輸入に頼っていますので、それが企業物価の動向に今、かなり反映してきています。さらにエネルギーだけではなくて、鉄鋼とかそういったものの価格も国際的に上昇してきている。それが影響しているということはあるわけですけれども。 この資源高の原因を見ますと、やはり世界的に経済活動の再開が進んで、需要が大きく拡大する中で起こっているわけでして、今のところ、この国際商品価格などの上昇、これは輸出の増加、あるいは海外収益の拡大といったプラスの効果のほうが原材料コスト上昇によるマイナスの効果を上回っているというふうに考えております。
2%にはまだ相当遠い
それからもう1つの、ご指摘の円安うんぬんですが、もし為替相場、円安の動きになりますと、現在の交易条件の変化に円安が大きく影響していることはないんですけども、仮に円安の動きが出てくるということになれば、円建ての原材料コストを押し上げるということにはなるわけですけども、同時に為替の円安は、その輸出金額とか、あるいは海外子会社の収益を押し上げるということもありますので、最近のこの企業収益の改善動向とか、あるいは消費者物価の落ち着きを踏まえますと、若干進んだ為替の円安というのは、これまでのところ、わが国経済にプラスに作用していると思いますし、今後為替がどのように動くのかというのは、いろんな状況によりますので、欧米が金融引き締め、あるいは金利の引き上げを行ったとしても、必ず円安になるとも限りませんし。また、そういった状況で仮に若干円安になっても、先ほど申し上げたように、現在の状況を見ますと、為替の円安というのは、むしろわが国経済にプラスに作用するというふうに思っております。 従って、ご指摘の欧米の金融政策スタンスと、日本銀行の金融政策スタンスが違うと。確かに欧米はかなりのインフレになっていますので、金融引き締め、金融緩和の正常化っていうふうに動きだしているわけですけども、わが国の場合は何度も申し上げますけども、物価上昇率は0%程度、いろいろな一時的な要因とかエネルギー価格を除いても、プラス0.5%程度ということで2%にはまだ相当遠いわけですので、現在の金融緩和、大幅な金融緩和を粘り強く続けていくっていうのは、これはわが国の経済・物価にとって必要なことであると思いますし、先ほど申し上げたように、それが交易条件の悪化を通じて何か日本経済に大きなマイナスになるというような状況ではないというふうに思っております。