日銀・黒田総裁会見12月17日(全文1)若干の円安はわが国経済にプラスに作用
米国の動向は日本経済にどう影響するか
テレビ東京:テレビ東京の大江と申します。よろしくお願いいたします。先ほどから世界の金融政策のお話が出ていますけれども、まさに今週、世界の中央銀行、政策ウイークだったと思います。その世界の中央銀行、特にアメリカの動向を受けて、日本経済にどのような影響があるとみていらっしゃるか教えてください。それが1つ目で。 もう1つ、もう12月ですので、今年1年を振り返っていただきまして、特に印象深かった出来事というのは、どういうことでしょうか。経済的なことでも結構ですし、それ以外のことでも結構ですので、教えていただければ幸いです。 黒田:あまり他国の金融政策についてコメントするというのは、やや気が引けるんですけども、最近の米国経済も極めて強い回復基調ですね。もうすでにコロナ前の水準をGDPは超えているわけですよね。で、さらに現在の見通しでも、かなり強い成長が今後とも続くという見通し。その下で、物価上昇率が7%弱まで上がってきていると。 そしてFOMCの見通しでも、従来の見通しよりも来年、あるいは再来年の物価上昇率も少し見通しよりも引き上げられていると。いつまでもこの今のような上昇が続くとは誰もみてないと思いますけど、それにしてもかなりな物価上昇ですから、ここで資産買い入れの減少を加速させると。 あるいはFOMCのメンバーのドットチャートを見ますと、多くの人が来年、3回金利引き上げがあるんじゃないかとみていると。これは決まった話じゃないんですけども、メンバーの多くが、そうみていると。ていうことは、逆に言うと、しっかりした経済成長が続き、インフレが抑制されるという、ある意味で言うと、より好ましい米国経済の成長経路というものを実現しようとしておられるし、おそらくそういうことになると思うんですね。
むしろポジティブに捉えていい
ということで、米国の金融政策の調整が、わが国経済にとってマイナスになるっていうふうにはまったく考えていません。よくいわれている話は、米国のそういう動きが途上国の金融とか何かに影響が出ないかということはいわれていますけども、現状、そういうような感じは、特定の、よく、いろんな幾つかの途上国の問題はその国の問題としてはあると思うんですけども、特にアジアの途上国など、マクロ経済も金融状況もしっかりしていますので、それが何か途上国に今の時点で大きな影響が出てくるとも思えませんので、全体としてわが国の経済にとってもマイナスということではなくて、むしろポジティブに捉えていいのではないかというふうに考えております。 それから、今年を振り返ってってまだ御用納めになってないんですけども、今年の経済というのは、やはりコロナの影響っていうのがあってですね、しかしその中で国・地域ごとにばらつきが伴いながらも、総じてかなりしっかりした回復をして、特に先進国を中心にっていうことですけれども、そういうことで良い方向には向かっているんですけど、他方で欧州を中心にコロナ感染症が再び拡大しているということがあります。これが経済の活動に大きな影響が出てくると懸念材料になるわけですけども、今のところ、欧州も公衆衛生上の措置を限定的なものにとどめて、経済活動の再開は継続しておりますので、こうした中で当面の経済はしっかり回復していると。 それから新興国でも、特にアジア、ラテンアメリカでは新規感染者数がおおむね抑制されて、内需とか生産も拡大して、輸出の増加もあって持ち直しているということで、いろいろ議論になる中国経済も改善ペースは確かに鈍化していますけども、基調としては回復を続けているっていうことで、いろいろあったけれども基本的に回復しつつあるということはいえると思います。 【書き起こし】日銀・黒田総裁会見12月17日 全文2へ続く