日銀・黒田総裁会見12月17日(全文1)若干の円安はわが国経済にプラスに作用
量的・質的金融緩和を継続
リスク要因としては引き続き感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要です。特に感染抑制と経済活動の両立が円滑に進むかどうか、不確実性が高いほか、一部で見られる供給制約の影響が拡大、長期化するリスクにも留意が必要です。 日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。 また、引き続き新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、国債買い入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給。それぞれ約12兆円および約1800億円の年間増加ペースの上限の下でのETFおよびJ-REITの買い入れにより企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていきます。その上で当面、感染症の影響を注視し、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については、現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しています。以上です。
対面型サービスで懸念している点は
読売新聞:すいません、ありがとうございました。幹事社から2問お願いいたします。1問目は今日の決定会合で資金繰り支援のコロナ対策について一部見直ししたわけですが、中小企業向け資金繰り支援、コロナオペについては来年9月まで延長ということでして、対面型サービスに一部厳しさが残っているとご指摘されていますけれども、具体的にどのような点をご懸念されているのか、ご説明いただきたい。 もう1点に関しては、米国や英国のほうで物価の上昇を踏まえて、金融引き締めの動きがありますけれども、日本も原材料高や円安ドル高の進展で原材料価格の上昇が指摘されています。物価上昇を背景に、日銀としては2%目標を掲げているわけですが、今後どのように政策運営をしていくお考えかを教えてください。 黒田:中小企業の資金繰りは先ほど申し上げたように、総じて見れば改善傾向にあるが、対面型サービスなど、一部になお厳しさが残っているということだと思います。例えば今週公表した、12月短観の資金繰り判断DIを見ますと、中小企業全体では+8と、プラスになっているわけですけれども、中小企業のうち感染症の影響を受けやすい宿泊・飲食と対個人サービスについてはそれぞれ-33、-11となお大きめのマイナスとなっており、改善が遅れています。 こうした状況を踏まえ、引き続き中小企業等の資金繰り支援に万全を期す観点から、コロナオペのうち中小企業支援に関する、中小企業支援に相当する部分を半年間延長することとしたわけであります。最近ではオミクロンという新たな変異株が発生するなど、感染動向を巡って不確実性の高い状態が続いております。こうした中、年内のこのタイミングでなるべく早く延長を打ち出すことが感染症の影響を受けやすい中小企業や、それを支える金融機関の安心感につながるというふうに考えております。 次に各国の金融政策に関することですけれども、それぞれ各国の金融政策は自国の経済、あるいは物価の安定を目指して行っているわけですので、当然、経済・物価情勢の差異に応じて金融政策の決定内容とか方向性に違いが出るというのは当然だと思います。ご指摘のとおり今週、FRBは資産買い入れの減額のペースを加速する決定を行ったほか、ECBはパンデミック緊急購入プログラムの下での資産買い入れの終了を決定しました。またBOEは政策金利の引き上げを決定しました。もっともこれら海外中央銀行の決定が直ちに日本銀行の政策スタンスに影響を及ぼすことはありません。海外のインフレ率を見ますと、米国では7%程度、ユーロ圏や英国では5%程度に高まっております。