「吹奏楽は大嫌いなのに……吹奏楽部の主顧問から逃れられない」、激白する1校1人の孤独な音楽科教員の闇
顧問を辞められるなら「罰金を払ってもいい」
高木さんは、「教員間の負担が平等ではない」ことにも違和感があるという。 「音楽科教員は、吹奏楽部の顧問を任されるだけでなく、必ず主顧問にされるんです。音楽の指導だけで済めばまだいいですが、練習計画の立案から会計業務、生徒間のトラブルや親とのコミュニケーションなど、とにかく時間がとられます」 副顧問も一応いるが、部活動にはめったに出てこない。土曜の練習日、高木さんに大切な用事ができたため1日だけ代理をお願いしたが、プライベートを優先されたという。 「それが『推しのライブ』だったと知って脱力しました。副顧問は新採用の先生なので、校長や教頭も非常に気を遣っているんです。たしかに今は教員不足で、とくに若手の先生は少ないので大切にしようというのはわかります。でも本音を言えば、すごく不公平だと思うのです。私を含め、40代の教員は新任のときからずっと負担が重かったのに、今でも若手の先生の分まで負担を負わなければいけません」 2023年12月に文部科学省が発表した調査では、精神疾患で休職した教員が2年連続で過去最多を更新している。「私の勤務校でも何人も休職している先生がいて、頑張れる教員の負担が増している」と高木さんは明かす。 「そうした影響で校務分掌が増え、授業準備や採点にかける時間が削られます。もうベテランなので、短時間の準備でも授業自体はできますが、しっかり資料を作れば生徒の理解が深まったかもしれないのに、と感じることが増えました。もっと手厚い授業ができていれば、成績をもう一段階上げられたであろう生徒を見ると、本当に申し訳ない気持ちになります」 そうは言いつつ、高木さんは教員間の負担が違ったとしても、教員として取り組まなくてはならない業務は受け入れると話す。我慢ならないのは、勤務時間外で「担う必要がない」にもかかわらず、優先的に取り組まざるを得ない部活動の存在だと力を込める。 「顧問を一切望んでいなくても、自ら選んだ体で全責任を負わざるを得ないことが本当に納得できません。『手当が出ればよいのに』と考える先生も多いようですが、私にとってはお金の問題でもありません。罰金を払ってでも部活動の顧問を免除してほしい、それくらいに部活動が嫌いです」 部活動の顧問に費やす時間を、本来やるべき授業準備や採点にあてたい。それができない現状は本末転倒であり、「部活動は学校から切り離して、地域のクラブでやればよい」と高木さんは主張する。
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