宇宙は無数に存在するのか…謎に挑み続ける物理学者たちがたどり着いた「意外な答え」
「超弦理論(超ひも理論)」の重要性
――現在、「相対性理論」と「量子力学」を融合させた「超弦理論(超ひも理論)」の研究がさかんにおこなわれています。「相対性理論」と「量子力学」を融合させることの重要性について教えてください。 野村:宇宙が量子力学で動いている、ということは確かです。でも、ここで一つ大きな問題があります。重力の理論である相対性理論、より正確には一般相対性理論ですが、それには量子力学の効果が入っていないのです。 一般的に、量子力学は小さいスケールでの方が、その影響が大きくなります。しかし、小さいスケールでは、重力は無視できてしまう。電磁気力に比べると、重力ってめちゃくちゃ弱い力なんです。 でも、大きいスケールでは重力は重要ですよね。僕たちは、地球の重力に引っ張られて、地面に立つことができている。宇宙論で語られる天体現象も、それぞれの天体の重力の効果によって起こるものがほとんどです。これは重力が、他の力とちがって引力としてしか働かないため、大きなものでは単純にその効果が足しあがるという性質を持つためです。 最近まで、量子力学的な考え方と重力が同時に必要になる、というような場面はありませんでした。だから、2つの理論を別々にしておいても問題はなかった。ただ、最近になってブラックホールのように非常に強い重力を持つ天体では、量子力学と相対性理論の両方を入れ込んだ理論がないと、どのようなことが起こるのか計算ができない、わからない、ということがわかってきた。わからないことをわかるようにするために、超弦理論が必要とされるようになりました。 1970年代に超弦理論の元となる弦理論が発表されましたが、その後この理論はあまり注目されませんでした。1980年代になって、マイケル・グリーン氏とジョン・シュワルツ氏が弦理論を見直したとき、重力が含まれている、ということに気づきました。さらに彼らは弦理論をブラッシュアップして、超弦理論を発表しました。