なんと、まっさきに「衰えてしまう筋」がある…じつは、山に登らない平地民にもオススメしたい、登山トレーニングが「衝撃のお手軽さ」だった
登山人口は年々増加の一途をたどり、いまや登山は老若男女を問わず楽しめる国民的スポーツになっています。いっぽう、登山人口の増加に比例して山岳事故も増えており、安全な登山技術の普及が喫緊の課題となっています。 【画像】普段はもちろん、下山後のクールダウンにも効くストレッチはこちら 運動生理学の見地から、安全で楽しい登山を解説した『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)から、特におすすめのトピックをご紹介していきます。 今回は、登山とよく使う筋と、そうした筋のトレーニング方法をご紹介します。実は、登山でよく使う筋のトレーニングは、体脂肪を減らし、生活習慣病の予防によく立つものも多く含まれています。 *本記事は、『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
登山では、どんな筋を使うのか
図「登山で使われる主な筋とその働き」は、登山で使われる筋を示したものです。 全身のたくさんの筋が、さまざまな役割を担って活動しており、登山が全身運動だということがわかります。このうちで、登山で疲労したり、筋肉痛が起こったり、痙攣しやすい筋、つまり行動の制限要因となりやすい筋は、大腿四頭筋、殿筋群、腹筋群、脊柱起立筋(いわゆる背筋)などです。 図「登山で使われる主な筋とその働き」にあわせて載せた「加齢や不活動によって衰えやすい筋」は、加齢によって筋力が低下しやすい筋です。また若い人でも、不活発な生活をしたり、それまで行っていた運動をやめると、これらの筋力が真っ先に低下します。 そして注意していただきたいのは、これらの筋は、前記した登山の制限要因となりやすい筋と同じなのです。したがって登山者の筋トレでは、これらの筋を優先的に強化することを考えます。
筋トレの目標と、そのための頻度や量
筋トレというと、ジムでバーベルやダンベルを使って行うもの、あるいはボディビルダーのように筋を太くするもの、といったイメージがあるかもしれません。しかし登山者の場合、自分の体重とバックパックを、余裕をもって動かせる筋力があれば十分です。一定レベルの筋力と、それを長時間にわたり持続できる能力(筋持久力)が重要なのです。 このため、スクワット運動や上体起こし運動といった、自分の体重(自体重)を負荷として行う種目で、まずは用が足ります。自宅などで、短時間でいつでもできるものと考えてください。 週に2~3回、20~30分程度の時間を確保して行います。忙しい人は、朝、昼、晩などに5分程度の空き時間を作って、少しずつ分けて行うのでもかまいません。 自体重を負荷とした筋トレをすると、その部分の筋量が増えて、少し太くなります。筋量が増えると安静時の代謝量も増えるので、体脂肪を減らす効果や、糖尿病などの生活習慣病を予防する効果ももたらしてくれます。