「理想は90年代のマイクロソフト」…経済評論家・山崎元さんが息子に残した「株式で稼ぐ働き方」
気づいたら億を超えるお金ができていた?
(2) 早い段階で起業に参加する 起業が有望だとしても、「ビジネスの種」を自分で思いつくとは限らないし、自分が起業家に向いたタイプであるとも限らない。 自分が直接起業するよりも、起業の段階、あるいは起業から間もない段階でベンチャー企業に参加する可能性も検討してみたい。 チャンスに対しては敏感にアンテナを張りたい。なるべく頭のいい奴、面白い奴と付き合え。君がその分野の天才でないとしても、天才君たちは仲良くしてくれるだろうし、君の役割は見つかるはずだ。 ここで大事なのは、入社ないし、入社からあまり日を置かずに、自社株に対する権利を確定することだ。いついつのタイミングで、「自社株を何株付与する」、「自社株を○○○円で買うことができる権利(「ストックオプション」と言う)を××株分付与する」といった内容の約束を、できれば書面で交わしておく必要がある。 入社の経緯との関係で、いつ書面で条件を確定するかは難しいが、社長の口約束は信用しない方がいい。 私の親しい知人で、あるベンチャー企業の社長の右腕として創業時から関わり、社長からは「株式を公開する時までには発行株式の10%をあげるから、一緒に頑張ってほしい」と言われていた人物がいる。 ところが、いざ株式の公開が可能になった時、金額を計算してみて株式を渡すことが惜しくなった社長に、半ば涙目で「1%でいいだろう」と懇願されて、受け入れざるを得なかったと言って笑っていた。それでも、億単位のお金にはなったのだが、予定がひと桁狂った。 ほぼ創業メンバーのような形での少人数からの参加でなくとも、社員番号で言って2桁くらいまでの参加であれば、後にメガベンチャーになった場合、勤めて10年くらい経った時に、「気がついたら、億を超えるお金ができていた」というような状態が生じる場合はよくある。 株式の公開に至る見込みは十分あるか、そこで働いていることが自分のプラスになっているか、といったことを見極めながら、ベンチャー企業に「どこまで付き合うか」を自分で判断する必要があるが、短期間で大きなお金を作ることができるパターンの一つだ。 繰り返しになるが、社長というものはわがままだ。繰り返すほどわがままなのかと問われたら、そうだと答えるしかない。そして、ベンチャー企業の社長はさらにわがままで、気まぐれだ。一緒に働くには苦労が多いはずなので、ベンチャー企業への入社にあたっては「社長との個人的な相性」は大いに考慮すべき材料だ。 ベンチャーの仕事はきつい。例えば、マイクロソフト社の創業者で大富豪のビル・ゲイツ氏のような人が、後年になってから「人生には仕事よりも大切なものがある。必要な時には休んでほしい」などとワークライフバランスの重要性を説いたりすることがあるが、この種の立志伝中の人物は、特に創業期にはほぼ例外なくワーカホリックと言っても過言でない仕事の虫だ。 ビル・ゲイツ氏は、創業間もないころ、窓から外の駐車場を眺めて、早く帰ってしまう社員をチェックしていたと後年明かしている。何と執念深いことか。ビル・ゲイツ氏のような才人にしてもそうなのだ。