「理想は90年代のマイクロソフト」…経済評論家・山崎元さんが息子に残した「株式で稼ぐ働き方」
「普通の若者」でも起業はできる
さらに、中途採用の増加などで労働市場の流動性が増して、起業に失敗した場合に再就職することが容易になったことは、起業者にとって起業の潜在的なコストを小さくしている。また、会社が雇った社員にとっても会社のビジネスが失敗することや自分が解雇されることのコストを下げている。 かつてであれば、学校の卒業時に起業を選び、「新卒」の時期の就職を逃すことは、生涯にわたる安定的な収入の可能性を放棄する大きな「機会費用」(ある選択によって放棄する最大の利益をコストと認識する概念)を意味したが、今なら、「起業の経験のある若者」を採用してくれる会社がたくさんある。 ただし、起業の主体になることが向いているかどうかは、本人の性格的な向き・不向きによるところがある。主に、人を雇い給料を払うことの経済的なリスク及び対人的なプレッシャーに耐えうるか否かが問題だろう。この問題には感じ方に大きな個人差がある。 「お金を払って働いてもらっているのだから、自分と社員の関係はフェアだ。上手くいかなかったら、『ごめん』と言って辞めてもらえばいい。こちらも大いに苦労しているのだから」という程度に考えることができて、給料を払える目処があれば、人を雇って会社を作ってみるといい。 一方、表に出ることが得意でないなら、別の道がある。次に述べるように起業家の初期のパートナーになって、「日本のスティーブ・バルマー」を目指すのでもいいだろう。 ちなみに、君の父親が自分の人生で起業しなかった大きな理由は、「人を雇うことのプレッシャーと責任感」を重く感じたからだったが、もっと気楽に考えたら良かった。今になって少し後悔がある。 一つ大事なことを言っておこう。 一般に、「社長」という種族はわがままだが、ベンチャーの社長はさらに輪をかけてわがままだ。わがままな社長に振り回されて働くか、自分自身が他人を振り回す側に回るか、と考えた時、「自分が振り回す方がずっといい!」と考えることはそう悪いことではない。 今や、普通の若者が自分で起業することを考えることに不自然さはない。