日本一のバルーンアーティストが焼き芋屋の店主に!コロナ禍の収入激減生活から一転、極甘蜜芋に懸けた「第二の人生」への想いとは
衝撃を受けた、300円のバルーンアート
きっかけは、地元・藤沢のお祭りだった。中山さんが何気なく露店を見て回っていると、一人の女性がバルーンアートのブースを出店していた。彼女が作っていたのは、子どもが喜びそうな花の形のブレスレットなどで「1つ300円」と書かれたポップを見た瞬間、衝撃を受けた。 「当時僕は、お客さんへのプレゼントとして、無料でバルーンアートを配っていたんです。だから、同じような風船を有料で販売していることに対して、ものすごい違和感を覚えて…。正直に言うと、ちょっと変な目で見てしまっていました」 後日、その女性がワークショップを開催すると知り、好奇心から参加することにした。終了後に思い切って話しかけてみると、同じ新潟出身ということですぐに意気投合。さらに、偶然にも住んでいる場所が近く、ホームパーティーにも呼ばれるように。 いざ顔を出してみると、集まっていたのはバルーンを生業とする人ばかりだった。そこで初めて中山さんは、彼女が幾度もの世界大会を制したバルーンアーティスト、細貝里枝氏であることを知った。 「世界チャンピオンに対して、自分はなんてことを考えていたんだ…!」 恥ずかしくなった中山さんは、初めて細貝氏に出会った日のことを詫びた。すると、彼女は「いいのよ。今の日本じゃ、誰だってそう思うから」と語り始めたのだそう。 「海外でバルーンアートのパフォーマンスをすると、楽しんでくれたお客さんは、その対価としてチップを支払ってくれるのだそうです。でも、日本はまだまだその文化が根付いていない。パフォーマーが日々勉強して、いくら技術を磨いても、対価を支払うパフォーマンスとして見てもらえない現実があることを知りました。『でも、その文化を醸成していくのは、私たちの仕事だ』と里枝さんは仰ったんです。その話を伺ってから、僕は無料でバルーンを配るのはやめて、募金などの対価を支払ってくださった方へプレゼントするよう、スタイルを変えていきました」 この出会いをきっかけに、中山さんは彼女を通じて知り合ったアーティストとともに、コンテストに出場するようになった。初出場にして準優勝を収めた結果「もう少し大きな大会に出てみないか?」と声がかかる。その大会こそ、日本一大きなバルーンイベント「JBANコンベンション」のコンテストだった。