“保健所”って何? コロナ禍で見えた重要性と課題
対応力があった大阪府
他方、大阪府ではコロナ禍発生以来、これまで保健所や各対応班がそれぞれExcelなどに入力していた各種情報を、ウェブシステムで一元管理する方法にいち早く切り替えた。各所管からリアルタイムに届く入力情報を基に、感染状況や病院施設の空き状況などを集計・グラフ化して最新情報を公開し共有している。こうすると、集計のみならず患者受入先の調整などもスムーズに行く。 患者に対してもパソコンやスマートフォンからオンラインで健康観察(体温や症状変化などの報告)ができるウェブ入力フォームが用意されており、健康観察にかかる患者や保健所の負担軽減、事務効率化が図られている。 「出口戦略」の指標をいち早く開発し話題になった吉村洋文府政だが、実はこうした先端的な情報システムを背後に用意しての指標づくりだから説得力は高い。全国にこうしたシステムが普及するよう、国はインフラ整備の補助金などを用意し体制を整えるべきではないだろうか。
【提言】保健所の役割の整理を
保健所は、病院と並び住民の健康や衛生を支える重要な公的機関だ。しかし、近年では市町村保健センター、福祉事務所などと統合され「保健福祉事務所」「福祉保健所」「保健福祉センター」「健康福祉センター」といった様々な名称となっており、何の施設なのか外から分かりにくい。保健所は地域保健法で必置義務があることから、その自治体は組織規程上○○保健所という名称を併せて付けている場合が多い(いわゆる「二枚看板」だ)。また施設の節約という観点から保健所を本庁の保健、衛生を所掌する部局自体と合体させ保健所と称している場合も少なくない。 先述のように、全国の保健所数は行政行革の名の下、この30年間で6割近くに減っている。これで良いのかどうか。予防医学という考えから普段は市民の健康管理を担うが、新型コロナのような新たな感染症が発生すると初期対応を迫られる機関だけに名称を含めその役割を整理し、市民と共有できるようにしたらどうか。 市民サービス、リスク管理に直結する専門機関として保健所のマネジメントは極めて重要性が高い。次々、施設数・人員の削減が進められたと同時に新たな仕事を付加した関係から、その役割が十分に果たされているとは言えない。特にコロナ禍でその問題が露呈した。 慢性的な予算不足に悩まされ、IT技術の導入、ネットワーク化の遅れなど時代のニーズに対応できていない。設置者の違いから連携が不足し、ヘルスケアの分野では自助、共助、公助のバランスが明確でない。新コロナ対応を機に、例えば「市民総合保健センター(所)」とし、病院と合築して市民の健康・医療面の安心センターの機関として発展的に強化するという考えはどうだろうか。いずれ、「災い転じて福となす」、コロナ禍を機とする新たな強化再編の動きに期待したい。