コロナ禍、注目集める「知事力」 国と地方のあるべき関係性とは?
新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」が横浜港沖に停泊(2月3日)してから4か月、政府が「緊急事態宣言」を発出(4月7日)してから2か月あまりが経った。この間、かつてないほどに各都道府県の知事の言動が注目を集めた。誰もが「正解」を持ち合わせていないウイルス対応で(1)意思決定(2)住民への情報発信(3)政府との折衝――などでリーダーシップや危機管理能力が大きく問われたからだ。 「コロナ禍」の知事たちの力量はどうだったのか。国と地方自治体の役割分担はどのようにあるべきなのだろうか。元都庁職員で行政学者の佐々木信夫・中央大名誉教授に考察してもらった。
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知事は社長? 中間管理職?
「権限は社長かと思ったら、天の声がいろいろ聞こえて中間管理職になった感じ」 東京都の小池百合子知事は、緊急事態宣言下における都内の休業要請の対象業種を発表した4月10日の記者会見でこう述べた。国との調整が入ったことにより都側の意向に沿わない内容となったことを臭わせたのだ。 コロナへの対応で、知事らの行動がクローズアップされ、いいアイデアも出るようになった。ただ全体的に総括すると、知事を対策の現場責任者としながら、国が特措法のガイドラインとして「感染症対策の基本的対処方針」を示し、箸の上げ下げまで指示するような文書を出したことで、国と地方の役割分担が不明確になり、国が知事の案を修正する権限を留保したことで知事は動きにくくなった。結果、国からの指示待ちのような姿勢をとる知事が増えた点は残念だった。 現在、47都道府県知事の約6割は中央省庁の中堅官僚から転じた人たち。行政や法律に詳しく公的組織で働くノウハウに長けている反面、中間管理職しか経験していない彼らは、もともと国の指示待ちの姿勢で、かつその指示を受け入れやすい体質を持っている。もちろん仕事ぶりに卒はないが、国と知事の関係からすると、言葉を強く言えば、分権改革の始まる2000年以前の機関委任事務制度下の関係、大臣の部下として行動する知事になり下がった感じがする。 逆に目立つのが、大阪や東京など非官僚出身の知事らだ。彼らは、国と地方自治体は役割こそ異なれど、対等な関係にあるという認識のもとで行動している。国の顔色をうかがうのではなく、国民、住民の暮らしに責任を持つという視点から様々な方策を打ち出している。いまメディアが取り上げ、知事の優劣を付ける中で優を付けるとすれば大阪や東京、北海道など非官僚出身知事の名がまず挙がる。