“無観客の都知事選” 17日間を振り返る
いつ始まり、いつ終わったか分からないような選挙―― 言わずもがな、今回の都知事選のことである。現職を含め史上最多の22人が立候補したが、有権者の投票の判断材料となるような政策論争はなされたのか。どうも本質的な議論が置いてけぼりにされ、有権者不在の「無観客試合」の様相を呈していた感がある。選挙戦を振り返ってみたい。(行政学者・佐々木信夫中大名誉教授) ***
投票率から見る
小池百合子都知事が過去2番目に多い366万票を得て再選を果たした。投票率は55%で前回より4.7ポイント下がった。コロナ禍という異常な環境下での選挙なので、史上最低の投票率になるのではないかとの予想もあったが、有権者はよく投票所に足を運んだと言えよう。 投票した有権者数に占める小池の得票率は59.7%であり、約6割が小池に投票したことになる。 現在、都の有権者は1144万人(6月1日現在)だが、これに占める今回の得票数は約32%。都民有権者の3人に1人が小池を支持したという見方も成り立とう。
ちなみに4年前の都知事選。小池百合子、増田寛也、鳥越俊太郎の三つ巴戦となったあの選挙は投票率が59.73%。小池が291万票(得票率約44%)を得て当選。それに比べ、今回の得票数は75万票増え、2位以下宇都宮健児、山本太郎、小野泰輔という主要3候補の合計得票数212万票を154万票上回っており、「圧勝」と言ってよい。 総じて現職が再選(2選目)をかけた選挙では、現職の得票数が初当選時より多く出る傾向にある。例えば美濃部亮吉(1967~79年)は初当選の220万票に対し再選は361万票、鈴木俊一(79~95年)は初当選の190万票に対し再選は235万票、石原慎太郎(1999~2012年)は初当選の166万票に対し再選は308万票という具合に。 今回の小池も初当選から75万票上回っている。 また、現職再選時の選挙は投票率も総じて低い傾向にある。1期目の評判が悪くなければ、再選を目指す2選目は現職の信任投票の色彩が濃く、選挙自体が盛り上がりに欠ける傾向にあるからだ。昨年の統一選でも11道府県で知事選が行われたが、投票率は平均47.7%止まりだった。主要候補が1対1で争う構図がない限り、他の知事選も低調なのが現状である。