東京都財政は本当に豊かなのか? 宣言延長受け、100万円の協力金即決
5月6日が期限であった緊急事態宣言が約1か月延長された。各地では事業者への休業要請を続けるか止めるか、補償はできるのか、いろいろな苦悩が出ている。そうした中、東京都はこれまで通りの休業要請の継続を宣言し、小池百合子都知事は休業や短縮営業に協力する事業者への「協力金」の追加支給を表明した。1千億円規模のカネをポンと用意する都に対し、「とてもウチは無理」と他道府県は追随できない様子。もっとも、気前よくカネを出す東京都の財政はそんなにも盤石なのだろうか?(佐々木信夫・中央大名誉教授)
都知事は誰でもできる?
「都知事は誰でもできる」―― 以前からこんな説がある。もちろん、それは誰でもなれる、という話ではない。しかし、多くの高次中枢機能(官公庁、大企業本社など)が集積し、「ヒト、モノ、カネ、情報」を吸引する立地条件の強さにあることは事実だ。“集積が集積を呼ぶ”メカニズム、そして中央集権という体制が首都東京の繁栄をもたらしている。これらの前提がある限り、東京は誰がやっても繁栄する。それは都知事の力量でも都庁官僚の力量でもない。
石原慎太郎都政時には、新銀行東京に1千数百億円が投じられたが、結果的に失敗に終わり、巨額損失となった。このように仮に都知事が政策ミスで多少の金を擦っても、巨大な都庁官僚制に任せておけば一定の行政水準は保たれる。7割以上が自主財源という豊かさのなす技だった。少なくともこれまでは。
直接カネを配る行政の危うさ
緊急事態宣言が始まった時から、事業者への休業補償や給付金が焦点になっていた。都が、休業要請に全面的に応じた飲食店などに対し「(最大)100万円出します!」と最初に打ち出したことで、他道府県は慌てた。 同じ状況なのに大阪など他の知事は「都は別格。ウチはとてもできません」と渋い表情だった。もっともその後、金額の大小はともかく多くの道府県が協力金(名称は少しずつ異なる)を支給する動きになった。ただ、宣言延長を受けてさらに協力金を追加するとなると、そうはいかない。しかも、今後も3次、4次と続く動きを警戒する向きもある。 休業要請と補償はセットでなければならない。しかし、行政による「直接給付」は、一般国民からすると負担を伴わないように映るため、要求が際限なく広がりやすく歯止めを掛ける必要がある。