「台湾」明記に中国の反発は抑制的 内在する日米の立場の違い
バイデン政権の台湾重視への強い姿勢
台湾では「日米両国が(台湾)周辺の安全保障に関心を寄せていることを喜ばしく思う。心から歓迎し、感謝する」との声明を外交部が発表しました。最近、中国軍機の激しい侵入を受けている台湾として、今回の共同声明は力強い励ましになったでしょう。 バイデン政権は発足以来、台湾重視の姿勢を一貫して取ってきました。1月の大統領就任式への在米の台湾代表の招待から始まり、台湾との交流に関する米国政府の新しいガイドラインの策定も行いました。これにより、米政府の関係者と台湾政府の関係者との会談についての制限が緩和されました。米連邦政府の建物で定期的に台湾政府関係者を受け入れられるようになると言われています。 トランプ前政権も台湾を重視していましたが、バイデン政権の台湾支持は一層強くなっています。
「中国包囲網」の恐れにも頑なな中国
中国は近年、領土的な野心を持って挑発行動を取っていると多くの人が感じているでしょう。中国は1992年に「領海法」を制定し、尖閣諸島、台湾、南シナ海の島嶼(しょ)をすべて中国領と定め、これに基づいて海洋戦略を実行し、拡張的行動を取っています。 一方、「クアッド(Quad)」の4か国(日米豪印)や西欧などの民主主義諸国は、中国が国際法とルールを無視し、人権も尊重していないため、中国との協調関係を維持することは困難だと見るようになっています。中国はそのような見方は誤りだとしていますが、民主主義諸国との立場の相違は拡大するばかりです。 中国の国力は確かに目覚ましく増大し、国際社会における発言力も強くなり、自信をつけてきていますが、中国としても、民主主義国との対立で経済面に悪影響が及ぶことは避けたいでしょう。2010年に日本を追い越した中国の国内総生産(GDP)は、10年後の2020年には米国の約7割に達しており、あと数年で米国を上回るとも言われています。一方で、成長率は鈍化しており、今後も順調に経済成長が続くとは限りません。中国包囲網が形成されると政治面だけでなく、経済面でも打撃を受けるでしょう。 にもかかわらず、中国は独自の道を進み、日米や西欧の民主主義国家との対立も辞さない姿勢です。中国が頑ななのは、経済成長を示す数字自体は米国にも近づいてきたものの、本心では「自分たちはまだ遅れている」という認識があるからだと見られます。また、その背景には、150年以上も以前のことですが、アヘン戦争(1840~42年)などにより西欧諸国の帝国主義の犠牲になった記憶が消えていないとの指摘もあります。