「はしゃぎたい人と静かに見たい人で席を分けて」――コロナ以降のライブ鑑賞、ファンの心境変化
1月末に政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」が一部変更されたことを受けて、ライブ・コンサートやスポーツ観戦の「声出し解禁」のニュースが相次いでいる。コロナ禍ではさまざまな制限のなか、出演者側も観客も楽しみ方を模索してきた。コロナ以前の熱狂に早く戻ってほしいと願う人もいれば、「声出し」を知らない新規ファンもいる。また、3月13日からはマスク着用も「個人の判断に委ねる」と政府が決定。感染拡大から3年あまり、ライブ鑑賞マナーの現在地や観客の心境を探るため、ファンの声を集めた。(取材・文:上田恵子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
3年近く大きな声を出していないので、思うように「キャー!」が出ない
コロナ禍でライブを楽しんできたファンたちは、どんな思いを抱えているのだろうか。最初に話を聞いたのは、ジャニーズファンのアイコさん(40代女性・仮名)。1995年に堂本剛主演のドラマ『金田一少年の事件簿』を見てデビュー前のジャニーズJr.にハマって以来、30年近くジャニーズのコンサートや舞台に通い続けている。 ジャニーズ事務所は2022年11月15日、不織布マスクの着用を前提に、会話レベルの声量での歌唱や声援、一時的に大きな声を出すことを解禁した。 「昨年の暮れ、東京ドームでHey! Say! JUMPのコンサートを見ました。アイドルのコンサートは、オープニングで推しの顔がモニターに映った瞬間や、ライブ中にカッコいいしぐさをした時などに『キャー!』と歓声が上がるのが醍醐味。それが復活して嬉しかったです」 「今回JUMPのペンライトは振ると音がする仕様になっていて、ドームで振ると結構なざわめきになりました。あと、昨年10月に行った三宅健くんのソロコンサートのペンライトは、トップの部分がソフト素材のクマちゃんで、キュッと押すと『プピー』と鳴るようになっていました。それを声援の代わりにキュッキュッとやるんです」
ようやく声を出せる状況になったにもかかわらず、思うように声が出なかったという。 「3年近く大きな声を出していないので、控えめな声援になってしまいました。スイッチを押すと、『キャー!』という声が出るペンライトがあるといいのですが(笑)。他の人たちも探り探りと言いますか、コロナ前の、ドームの天井が抜けそうなくらいの『キャー!』に比べると、『これぞジャニーズのコンサート』というボリュームではなかった気がします。でもやっぱりメンバーは嬉しそうで、声援や笑い声って大事だなと思いましたね。拍手もいいですが、ペンライトとうちわを片手で持って、もう片方の手は双眼鏡、拍手しなきゃいけない時は双眼鏡をあきらめて……と忙しいんですよ(笑)」 拍手や「キャー!」はアイドルへのエール。できるだけたくさん届けたい、とアイコさん。その思いは変わらないが、この3年で自身の変化も痛感している。 「最近は着席ブロック(開演から終演まで座って見る席)で見ることが多いのですが、座ってゆっくり見られるのは年長のファンとしては正直ありがたい。こういうエリア分けを、声出しなどに関してもうまく適用してみるといいのかもしれませんね。あと、私自身の熱量が、コロナ前の状況に戻っていないのがつらいです。以前はツアーが発表されたら、チケットを申し込む前に宿を押さえることを反射的にやっていたのですが、そのリズムに乗れていない。今は、時間とともに気持ちが完全復活するのを待っている状態です」