「速いウイルス」と「遅い日本政治」 NZに学ぶ感染症対策に必要な「改革断行力」
ニュージーランドの「改革断行力」
新型コロナウイルスの抑え込みに成功している国もある。 成功した国の代表のようにいわれるニュージーランドと台湾は、前者は人口において、後者は国土において小国であり、それなりのメリットがあったのだろうが、政府と国民に危機意識が高かったことが大きいのではないかと前に書いた。それが迅速で徹底した対応につながったのだろう。 台湾の危機意識が高いのは、中国との関係で常に戦時のような感覚を維持しているからではないかと想像できる。ニュージーランドは、他の世界から隔絶された桃源郷のような風土であることにより、外界から入ってくる厄災に敏感であるからではないかと書いた。また人口密度の低さも有利にはたらいているだろう。 しかしそれだけでは説明できないような気がする。ニュージーランドの政府と国民の危機意識が高かったことのもうひとつの理由として、ここしばらく徹底した内政改革を進めることに成功したことがあげられるのではないか。 かつてこの国の経済はイギリス経済に深く組み込まれていたが、英国がEC入りしたために農産物の輸出先を失って経済危機に陥った。70年代の工業化政策は失敗したが、80年代に一部国民の猛反対もある中で、21の国営企業を民営化し、官僚の数を半減し、大量の規制を撤廃して競争原理を導入した。まさに「断行」である。初めのうちは倒産企業と失業者が増えて混乱したが、やがて経済が回復し、結果として福祉も向上したという。 ここでいいたいことは「改革を断行する力」と「緊急事態に迅速に対応する力」は同じタイプの力ではないかということだ。国土の小さい台湾にも学ぶべきことはあるが、人口の少ないニュージーランドにもあるとすればそのことだろう。 戦国時代に戻ると、信長、秀吉、家康という武将が、戦争に強いばかりでなく画期的な都市計画家であったことに、僕は注目している。楽市・楽座、城づくりと街づくり、検地と刀狩り、埋め立て、河川整備、街道整備など、そういった点がそれまでの武将とは異なっている。岐阜と安土をつくったのは信長であり、大阪をつくったのは秀吉であり、江戸をつくったのは家康である。彼らに比べれば近現代の政治家は何もしていないに等しい。彼らはただの戦争屋ではなく改革断行者であり都市建設者であったことが、天下を掌握できた理由ではないか。 つまり内政改革断行と感染症対応につながりがあるように思えるのだ。