なぜヴィッセル神戸はウクライナ侵攻余波で“ロシア撤退”の元日本代表MF橋本拳人の獲得に動いたのか?
今シーズンのJ1リーグ戦で未勝利が続くヴィッセル神戸は27日、ロシアプレミアリーグのロストフから元日本代表MF橋本拳人(28)が加入すると発表した。 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、国際サッカー連盟(FIFA)が両国のクラブに所属する外国籍選手を対象として、移籍期間外の国外移籍を一時的に認めた特例措置を受けたもので、契約期間はレギュレーションで定められた6月30日までとなっている。 神戸は同日、スペイン出身のMFセルジ・サンペール(27)が右ひざの前十字じん帯を損傷して、全治約8ヵ月と診断されたと発表。シーズン中の復帰が絶望となったアンカーが抜けた穴を、森保ジャパンで13試合1ゴールの実績を持つ、古巣のFC東京からロストフへ移籍した2020年7月以来の日本国内復帰となる橋本で埋める。
「この1か月間、難しい状況だった」
新天地・神戸を通じて発表されたコメントに、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアで抱き続けてきた、橋本の偽らざる思いが凝縮されていた。 「ここ1か月間、難しい状況だった僕に声をかけていただき、仲間に入れてくれたヴィッセル神戸さんには本当に感謝しています」 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナへの軍事作戦開始を表明した2月24日未明。ほどなくして橋本も自身のインスタグラム(@kento_hashimoto_18)内のストーリーを更新し、こんな言葉を投稿していた。 「ご心配をしてくださっている方々へ。いろいろとニュースが出ていると思いますが、僕も何が起きているか詳しくは把握できていません。身の危険は感じていませんし、生活も特に変わらず、練習も普通に行われています」 西側でウクライナと接するロストフ州の州都、ロストフ・ナ・ドヌを本拠地とするクラブでプレーする橋本の身を案じるファンの声に答えた投稿。自身が置かれた現状を伝えた橋本は、同時に例えようのない不安も綴っていた。 「試合は3日後に行われる予定でしたが、空港が閉鎖されたため不透明という感じです。正直この先何が起きるか少し怖いですが、僕は何もできないので試合に向けて準備をするだけです」 軍事侵攻が始まった当時のロシアプレミアリーグはウインターブレーク中だった。しかし、ホームのロストフ・アリーナにクリリヤ・ソヴェトフを迎える予定だった27日の再開初戦は、橋本が危惧していた通りに中止となった。