なぜヴィッセル神戸はウクライナ侵攻余波で“ロシア撤退”の元日本代表MF橋本拳人の獲得に動いたのか?
一転して敵地に乗り込んだソチとの次節は開催され、橋本もインサイドハーフで先発出場。1ゴール1アシストをマークしながら負傷で前半終了間際に退場した、昨年10月のアルセナル・トゥーラ戦以来の復帰を果たし、後半39分までプレーした。 しかし、ソチ戦が行われた3月7日に状況が一変した。 FIFAが緊急声明を発表し、ウクライナとロシア両国のクラブに所属している外国籍の選手および指導者が、現在結んでいる契約と関係なくフリーの状態となって、他国のクラブと契約できる特例措置が取られることが決まった。 国際プロサッカー選手会(FIFPro)の要請に応じたもので、具体的にはリーグ戦が中断し、外国籍選手や指導者の多くが国外へ避難していたウクライナでは、今シーズンが終わる6月30日まで各クラブとの雇用契約停止が保証された。 一方でロシアでも、各クラブに所属している外国籍選手および指導者と、3日後の3月10日までに再契約を結ぶ通達が出された。さらに交渉が書面による合意に達しなかった場合には、6月30日まで雇用契約が停止されると保証された。 今シーズンのロシアプレミアリーグでは、1部で橋本を含めて133人、2部で54人と合わせて187人の外国籍選手がプレーしていた。 そしてFIFAの通達を受けて、ロストフではアンゴラ出身のDFバストス(30)、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表のDFデニス・ハジカドゥニッチ(23)、スウェーデン代表MFポントゥス・アルムクビスト(22)ら5人の契約が一時停止されたと報じられた。 橋本に関しては同様に一時停止されたとも、再契約したとも伝えられるなど情報が錯綜した状態にあった。しかし、15日のルビン・カザン戦、21日のディナモ・モスクワ戦と連続してベンチ外となった点から、再契約に応じなかったことがわかる。 ヨーロッパの冬の移籍市場は1月末に閉じていたが、今回の特例措置によって4月7日を登録期限として、各クラブとも2人を上限として登録できるとFIFAは認めた。 しかし、リーグの公平性を保つという理由でプレミアリーグ、セリエA、ブンデスリーガなどはウクライナおよびロシアの選手を受け入れない方針を固めた。ヨーロッパにおけるこうした事情が、橋本をして「難しい状況」と言わしめたのだろう。 そのなかで素早く動いたのが神戸だった。 元日本代表の武藤嘉紀(29)、日本代表の大迫勇也(31)とフォワード陣に怪我人が相次いだ神戸では、アンカーのサンペールまで離脱。シーズン中の復帰が絶望となった。