なぜW杯出場を決めた豪州戦で森保監督の采配がズバズバ的中したのか…「積極と消極の2つの判断がある場合は積極を」
カタールワールドカップ・アジア最終予選の第9節が24日に行われ、日本代表は敵地シドニーのスタジアム・オーストラリアでオーストラリア代表を2-0で撃破。グループBの2位以内を確定させ、7大会連続7度目の本大会出場を決めた。 両チームともに無得点のまま、引き分けの気配も漂い始めた後半44分に、直前に投入されていたMF三笘薫(24、ユニオン・サンジロワーズ)が値千金の代表初ゴールを決めて先制。三笘は終了直前のアディショナルタイム4分にも得意のドリブルを駆使して左サイドからカットインし、ダメ押しとなる2点目をねじ込んだ。 第3節までに2敗を喫し、森保一監督(53)の解任も叫ばれた日本だったが、システムを4-2-3-1から4-3-3へ変更した第4節以降は6連勝とV字回復。中国代表と引き分けたサウジアラビア代表を抜いて1位に浮上した森保ジャパンは25日に帰国し、凱旋マッチとなる29日のベトナム代表との最終節(埼玉スタジアム)に臨む。
「崩せば侵入していけるスペースがあった。ここは行くしかない」
選手交代を告げるボードに記された番号が、雨中で繰り広げられてきた激闘で体力も、気力も消耗しかけていた森保ジャパンを奮い立たせた。 両チームともに無得点で迎えた後半39分。引き分けの気配も漂い始めたなかで森保監督が動いた。疲労困憊だったインサイドハーフの田中碧(23、フォルトゥナ・デュッセルドルフ)に代わり、攻守両面でアグレッシブかつ献身的に動き回る原口元気(30、ウニオン・ベルリン)が投入された意図は伝わってきた。 意外に映ったのは左ウイングの南野拓実(27、リバプール)に代わった三笘だった。引き分けでも決して悪くはない状況で投入された、緩急を駆使したドリブルを武器とする代表2戦目のジョーカーが背負う「21番」が、指揮官からのメッセージと化した。 右足を痛めて今シリーズを辞退した酒井宏樹(31、浦和レッズ)に代わり、右サイドバックを務めていた山根視来(28、川崎フロンターレ)が言う。 「薫(三笘)が入ってきたことが、ひとつのメッセージだった。僕自身、引き分けでいいとは考えていなかった。そこはチーム全体で共有できたと思っている」 共有されたビジョンは、三笘の投入からわずか5分後に具現化された。 ペナルティーエリアの右外でパスを受けた山根の視界には、ゴール正面に侵入してきたインサイドハーフの守田英正(26、サンタ・クララ)だけでなく、守田の後方、ファーサイドにポジションを取っていた三笘の姿もしっかりと映っていた。 選択したのは右足アウトサイドを使った守田への横パス。さらにボールを追う形で猛然とペナルティーエリア内へ侵入し、オフサイドにならない形で右側へ急旋回した山根は右手で指さしながら、守田からのパスを呼び込んだ。 「宏樹くん(酒井)がいなかったから、と言われたくなかった。プレッシャーは感じていたけど、自分のなかで『簡単に逃げるな』と言い聞かせ続けていた」 こう振り返った山根と視線を合わせた瞬間に「パスが来る」と、以心伝心で応えた守田は相手を背負いながら、指示されたスペースへボールを託した。 「自分のパスがちょっとずれてしまったのは、視来くん(山根)には申し訳なかったですけど、そのあたりは見なくても連携できていた」