広島の新4番・小園海斗はなぜ、着実にレベルアップできたのか
常に全力疾走を怠らず、積極性を失わない姿勢
その後も小園のプレーを見る機会は多かったが、見る度に体も大きくなり、攻守ともに順調にスケールアップしていた印象が強い。 そして最も強烈なインパクトを残したのが3年夏に出場した甲子園大会の初戦、対聖光学院戦だ。 第1打席でレフト、第2打席ではセンター、第4打席でも左中間へと3本のツーベースを放って出塁。その後すべてホームに生還し、チームは3対2で接戦を制したのだ。 もう一つ驚かされたのがショートの守備である。他の選手と比べても明らかに2~3mは後ろで守り、そこから軽快な動きと強肩でゴロをアウトにしていたのだ。 体つきも特に下半身周りが充実しており、高校生のなかに1人だけ大学生か社会人が混ざっているように感じた。当時のノートにもこのように書かれている。 「春と比べても一回り体が大きくなり、それでいながらプレーのスピードはまったく落ちていない。 146キロのストレートに対しても難なくミートし、ヘッドがしっかり走るので左方向への打球も速い。甘いボールは初球からどんどん振れる積極性も素晴らしい。 打球の速さ、勢いは他の選手と明らかにレベルが違う。下半身が強く、変化球に対してもしっかり体を残して流れずに振れる。ベースランニングのスピードも抜群で、足を緩めずに次の塁を狙う姿勢も素晴らしい。 (中略) 守備位置深くても打球に対する反応が素晴らしく、前の動きも左右の動きも軽快。捕球から送球の流れもスムーズで、フットワークも流れるよう。高校生のショートとしては言うことないレベル」 この年の甲子園では春夏連覇を果たした大阪桐蔭の根尾昂(現・中日)が注目を集めていたが、ショートらしさで言えば小園のほうが大きく上回っていたことは間違いないだろう。 入学してきた時から評判のいわゆる“スーパー1年生”は少なくないが、そこからここまで順調に成長した例は珍しい。 体つきやスイングの力強さももちろんだが、常に全力疾走を怠らず、積極性を失わない姿勢も成長できた要因の一つではないだろうか。 プロでも2年目こそ苦しんだものの、それ以降は年々着実にレベルアップしているように見える。 元々守っていたショートは冒頭でも触れたように矢野が任されているが、サードやセカンドでも見事なプレーを見せており、選手としての幅が広がっているのもプラスだ。 今後も広島はもちろん、侍ジャパンを牽引する活躍を見せ続けてくれることを期待したい。
TEXT=西尾典文 PHOTOGRAPH=西尾典文