「船遊び」のプロが語る・もっと 海を“ 楽しむ”方法。必要 不可欠な「船」への尊敬と、海外のオーナーが持つ「ノブレス・オブリージュ」の精神とは! (インタビュー第2回)
欧米では、どのように「船」で遊んでいるか知っていますか?
普段、生活しているうえで、漁業従事者や自分で船を持っている人でなければ、「船」という乗り物は近いようで遠い。 知っているのはせいぜい「釣り船」で、本当の意味での「ボート遊び」を知る機会がない。 7月下旬に行われたノルディックボートの展示試乗会で「QUARKEN27」のキャプテンを務めていたのが、ヘミングウェイが建造に関わった船を所有する吉原 浩孝氏だ。吉原氏は、横浜ベイサイドマリーナを拠点とし、クルーザーの販売やメンテナンス業務を行う企業・ハウンツの代表である。 吉原氏から聞いた話は「本当の海遊び」を知っている人にしか語れない、とても興味深いものであった。これを読めば、世界のマリンライフの片鱗を楽しめる。今回は、インタビューの2回目(インタビュー・2/2)。
法律を緩和するだけで、「地方にお金が落ちる仕組み」を作ることができる
―― 日本では船を持つことが、アメリカやヨーロッパほどステイタスではないように思えます。 吉原 大型の船って、不動産よりも高いわけですよ。何千万~何億円もします。 不動産だったら、取引するには宅建がいて、建てるなら建築許可がいる。図面を引くには建築士。電気工事士とか足場を組むにも許認可・許可がいる。 それに対して船の許認可って、中古艇だったら古物商の届け出だけ。だから我々の業界の地位が上がらないっていうのがあります。 最近でこそ言われませんが、昔は「船屋さんが船を持てるの?」って、よく言われましたよ。そんなに儲かってるの? みたいに言われたこともあります。 だから、自分たちは自分たちで、業界の地位を上げる。ちゃんとした商売をやっていく。まずはそこだと思っています。 ―― 船の世界は、我々水上バイク業界より、もっと地位が確立されていると思っていました。 吉原 ちょっと話が逸れるけど、以前から僕らの中で話題になっているのは「カジキ釣り」のトローリング禁止についてです。 ―― カジキを釣ってはいけないんですか? 吉原 いや、カジキは漁獲制限もないし、釣ること自体は問題ないです。 カジキ釣りは「トローリング」で行うことが一般的です。問題は、「トローリング」という、引き縄漁法(※引き縄漁:擬餌針付きの釣り糸を、船を走らせながら引いてかかった魚を捕る漁法。この漁法で釣る代表的なものはカツオ、マグロ、カジキ、サワラなど)がダメってこと。 ―― どういうことですか? 吉原 これは昭和40年にできた60年以上前の法律なんですが、「引き縄漁」って、許可を取らないとできない。でも、見方を変えたらこれを解放することで、お金を持っている人たちがトローリングをやるようになるわけですよ。 経済効果って考えたことがありますか? ということです。 カジキを釣るために船を買うし、島にも行くようになる。港に行く、燃料を入れる、ホテルに泊まる、食事をする。行けば、絶対に1回は燃料を入れるわけですから、そこにお金が落ちるわけですよ。 下田でカジキ釣り大会があるんですけど、イベント期間中の4日間で、1億円近いお金が下田に落ちる。 僕が使う一万円と、大きな船のオーナーが使う一万円では、価値観が違います。経済を考えたら、お金を持っている人に使ってもらうのが一番なんです。 ―― 確かに、たった数日でそれだけの金額が地元に落ちるなら、活性化のためにもいいですよね。 吉原 行政がそこに気付き始めているのが、瀬戸内のほうです。 数年前、ヨーロッパから150フィート級のスーパーヨットが来たことがあります。1隻で、ひと月にどれくらい地元にお金を落としたと思いますか? メンテナンス、燃料代、いろんなゲストが来て、なんだかんだで4,000万円です。たった1隻で、ありえないくらいのお金が落ちる。 ―― それなら、ぜひとも来てほしいですよね。 吉原 それで今、瀬戸内の方では世界へ向けて誘致活動をしているわけですよ。 ジャンルは違うけど、「トローリング」っていうのは、国内の富裕層にお金を落としてもらえるいい機会なんです。 許可制でもいいけど、「もっとこうすれば皆さんが遊べて、地域にもお金が落ちる」っていう考え方を、どうしてしないんだろうって、いつも思っています。
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