神業FKは健在だった…遠藤保仁がジュビロ磐田移籍後初ゴール…奇跡のJ1昇格はなるのか
40歳を超えてもまったく色褪せないテクニックと、濃密な経験に導かれた相手ゴールキーパーとの心理的な駆け引き。2つの卓越した能力をフル稼働させたMF遠藤保仁が、新天地・ジュビロ磐田に加入して5試合目で待望の初ゴールを、代名詞でもある直接フリーキックを叩き込んで決めた。 ホームのヤマハスタジアムにザスパクサツ群馬を迎えた、25日の明治安田生命J2リーグ第29節。開始早々の2分に先制される嫌な流れを断ち切り、3-1の逆転勝利へと繋がる前半29分の同点ゴールは「50番」を背負うレジェンド、遠藤の右足に宿る伝家の宝刀から生まれた。 自陣からのロングボールに抜け出したFW小川航基がDF舩津徹也に倒され、獲得した直接フリーキックのチャンス。相手ゴールを正面にしてやや左。距離にして約18m。ザスパクサツは守る側のセオリー通りに、キッカーから見て近い方の左側、いわゆるニアサイドに5枚の壁を並べた。 さらに間隔を空けてファーサイドにも3枚の壁を配置。ザスパクサツの守護神、清水慶記からボールを見えにくくするために、ジュビロも3人の選手を壁と壁の間に立たせた。ボールの背後には最終的に左利きのDF伊藤洋輝、そして遠藤がスタンバイしていたが、誰が見ても後者の距離だった。 「縦回転のような感じのキックを映像で見ていたので、その意識をもって構えていたんですけど」 遠藤が蹴ると信じて疑わなかったと試合後のオンライン取材で明かした清水の脳裏には、いざ刹那になって別の種類の、セオリーに反するような思いが頭をもたげてきたという。 「結果論で言えばニアサイドは壁に任せて、ファーサイドの部分だけをケアしておけばよかったんですけど。自分のなかでちょっと欲張って、全部頑張ろう、という感じになってしまって」 果たして、ゆるやかな助走からキックモーションに入った瞬間に、遠藤は踏み込んだ左足のつま先をニアサイドに少しだけ向けている。つられるように清水の重心も、ほんの一瞬ながらニアにかかる。しかし、遠藤が最初から狙いを定めていたコースは反対側。ファーサイドに立つ壁の上だった。