関西ジャニーズJr.、チェキッ娘、清竜人25――アイドルたちのセカンドキャリア
ジャニーズからの転身
最後は、華やかな芸能界とは正反対の「お堅い」セカンドキャリアを選んだ元アイドルを紹介したい。 関西ジャニーズJr.全盛時代に中心メンバーとして活躍した呉村哲弘(38)が選んだのは、国家資格で難易度の高い、いわゆる「士業」だった。 「一生の仕事になるものを見つけたかった。それが税理士でした」 呉村は中学2年生のとき、数百人の中から数人しか受からないジャニーズ事務所のオーディションに合格した。 「合格したその日から雑誌やテレビ等の色々な仕事に恵まれ、半年後にはプライベートで大阪の街を歩くことが難しいほどに、たくさんの方々に知ってもらえるようになりました。大阪という街がアイドルを待っていたという空気感を感じました」 大阪と東京を頻繁に行き来し、ジュニア時代の関ジャニ∞や嵐のメンバー達と共に活動し、KinKi Kids、SMAP、V6……時代を彩ったグループのほぼ全てのバックで踊った。 ステージに立つことの興奮は何物にも代えがたかったが、2年も経てばその刺激に慣れてしまう。16歳でジャニーズ事務所を退所して、単身上京して役者を志すことにした。 「飽きっぽいというより次に進みたくなるんです。アイドルを続けていくモチベーションが自分にはなかったんでしょうね」
呉村は、沢木哲という名で、実力派俳優が多く所属する事務所に所属した。 少し影のある役を得意とし、演技を高く評価する声もあった。ドラマ『北の国から』では竹下景子の息子役を演じ、『フラガール』などで知られる李相日監督の出世作となった映画『BORDER LINE』では主役を演じた。そのとき、一つの達成感を得ていた。
役者から税理士へ
19歳の頃にはすでに役者の次のステップを考えていたという。 「仕事人間だった父親の背中を見ていたから、不安定な芸能界とは違う堅実な仕事に就くことを見据えていたんです」 どうせなら一生の仕事になるものを見つけたいし、周囲から一目置かれる存在でもいたい。呉村は国家資格を取る決意をした。しかし、アイドル業に専念した結果の高校中退という学歴を突きつけられた。弁護士や公認会計士は大卒資格や一次試験に合格する必要があった(当時)。 これから一から学ぶには時間が惜しい。だが、税理士試験なら日商簿記1級を取得していれば受験ができる。 「消去法で選んだ税理士でしたが、人生を賭ける仕事として大きな魅力を感じていました。というのも、勝算があったからです」 今でもそうかもしれないが、地味で勤勉なイメージが税理士にはある。 「だからこそ自分のような税理士らしくない税理士が参入したら、すごい化学反応が起きるに違いないと思ったんです」 茶髪の弁護士と言われた橋下徹がテレビ出演して人気となったのもこの頃。士業×意外性という組み合わせは、世間的に引きがあると感じていた。 合格率10%といわれる日商簿記1級を半年で取ると決めてからは、朝から夜まで予備校に閉じこもり、ひたすら勉強した。帰宅後も深夜まで勉強。それを毎日繰り返し、周囲から絶対に無理と言われた日商簿記試験に合格。だがそれはスタートラインに立ったに過ぎず、そこから本格的な試験勉強が始まった。 「全てを犠牲にして勉強に打ち込みました。つらくなった時は自分が成功した時のことをイメージしましたね」 成人式にも出席しなかった。昔の仲間が活躍しているのを見るのはつらかったから、テレビもつけないようにしていた。その努力が実ったのは4年後だった。