国民無視の「年収の壁」には、もううんざり…!厚労省の「悪手」と財務省の「経済音痴」で野ざらしにされるこの問題に、私が一石を投じます!【経済学者の提言】
「社会保険料の壁」は最悪だった…!
国民民主党が主張してきたいわゆる「103万円の年収の壁」の引き上げの方針が、閣議決定された。 【マンガ】工事現場でよく見かける「交通誘導員」はいくら稼げる?驚きの最高月収 ここまで、「103万円に所得税の壁はない」とか、厚生労働省が、週20時間以上働くすべての労働者から社会保険料をとって「社会保険料の壁」をなくすと言い出した。 議論百出の「年収の壁」撤廃問題だが、要は国民民主党の言うように、手取りの「壁」をなくす方策をどうするかを考えれば良い。そうすれば、手取りは増えるし、社会保障費は賄えるし、経済成長まで見込める誰にとってもハッピーな結果が生まれるはずだ。 これから私は、最も良いと考える方法を披露したい。 そもそも一定の基準よりも所得が増えると手取りが一気に減ってしまうのでは、働く意欲がわかないばかりか収奪的で、経済的にも社会保障の面から見ても悪手と言えるものだった。 だから「壁をなくそう」という提案が出ているわけだが、問題が大きいのは103万円の「所得税の壁」ではなく、106万円、130万円で一挙に生じる「社会保険料の壁」である。 誰もが感じていることだろうが、年収の壁の議論のポイントは、社会保険料の収入の「壁」をいかにして「坂」にするかである。
物価高だから「基礎控除」の引き上げを
国民民主党は、税金の年収の壁をなくし手取りを増やすために、所得税が課される年収の基準を103万円から178万円に引き上げるよう主張している。 これは「年収の壁」の問題というよりは、物価が上がり、また名目賃金も上昇していることから、税が免除される「基礎控除」と「給与所得控除」(以下、「基礎控除」に統一して言う)の合計を現行の103万円から引き上げようというのが政策の本質である。 基礎控除額が本当に178万円まで引き上がるかどうかは別にしても、インフレにあわせて控除額を引き上げるのは、多くの国でやっている当たり前の政策で、私ももちろん賛成である。 いまの103万円のままでは、実質的な増税と変わらない。インフレや賃金の上昇で、国は消費税や所得税の歳入が増えているわけだから、基礎控除額を増やすという実質的な減税をして調整するのは当然の政策だ。 ただし、今回のテーマの「年収の壁」に照らして議論を進めると、実は所得税は「103万円の壁」を作っているわけではない。年収が103万円を超えて113万円になっても、113万円から103万円を引いた10万円に5%が課税されるだけなので、9万5000円は収入になるからだ。 にもかかわらずこれが、「年収の壁」と言われているのは、扶養控除の問題があるからだ。たとえば、学生が103万円以上稼いでしまうと親の特定扶養控除63万円がなくなって、親の税金が一気に増えてしまう。仮に親の所得が600万円程度なら地方税も含めて税率3割で18万円程度、家計の手取りが減る計算になる。そのため親の扶養に入っている学生などは、働くことを控えるようになっているのだ。 ここで考えられる「所得税の壁」の解決策は、子どもの所得が5万円上がるごとに、扶養控除を5万円ずつ段階的に引き下げていくことである。 ちなみに、配偶者控除は妻の収入に応じて段階的に引き下げられる。財務省の性格からして、扶養控除を段階的に引き下げる改革をするのは「面倒だ」と言いそうだが、なぜ配偶者控除と同じことができないのか、意味が分からない。 しかし、こうした問題よりもより厄介なのが「社会保険料の壁」だ。私はこれをなくすことが、何より重要だと考えている。なぜなら、社会保険料を税と考えれば、壁ができるのは究極の不合理な課税制度だからだ。
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