「極楽とんぼはどこかで終わると思ってる」ーー加藤浩次の意地、山本圭壱の覚悟
加藤:それは、山本は追い込んだほうが面白くなるから。でも自分では追い込まれるの嫌だもんな。放牧してほしい方だもんな(笑) 山本:そう。カッコいい自分を見せたい人だから。でも(加藤は)そうしないじゃん。俺をカッコよくさせない。相方にすげえ短いリードをつけて、すぐ引っ張る。それが極楽とんぼの加藤浩次。 加藤:だから、山本さんがいないときに出るのが「本当の加藤浩次」なのかもしれない。山本さんに会って極楽とんぼを結成して、芸人になった時にガチっとスイッチを入れた気がする。俺たちはネタであがってきた芸人じゃないじゃん。今まであった笑いのハウツーとか、パターンをぶっこわすつもりでやってきたから。 山本:お笑いをやるからこそ、こっちにスイッチしてみようか、という。 加藤:後々「狂犬」とかって言われるようになったんだけど、今考えると、実はコンビ結成の時にスイッチ入れていたような気がするんだよな。
極楽とんぼはハッピーエンドかバッドエンドか、見届けたかった
まだ訛りの残る素朴な道産子だった加藤と、素肌に紫のVネックセーターを着た、「胡散臭い(加藤談)」山本が、劇団「東京ヴォードヴィルショー」で出会ったのが1989年。その後、1996年にスタートした『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、全国的な知名度を手にした。 「極楽とんぼの根幹」(山本)、「番組がなかったらお笑いを辞めていると思う」(加藤)と語るほど、今に至る極楽とんぼを形作った『めちゃイケ』だったが、ある日、番組のクレジットから山本の名前が消えた。結果的に復帰まで10年を要した、不祥事による活動自粛。その後、山本の芸能界復帰のきっかけとなったのも、他ならぬ『めちゃイケ』だった。 山本:『めちゃイケ』がはじまったばかりの時は、いつも「なにか爪痕を残そう」って言ってたよね。爪痕とか風穴とか、あなたはいつも「風穴ぶちあけよう」みたいな言い方をするんだよ。 加藤:でも、あの時はそうするしかなかったんだよ。俺たちは基礎がしっかりある芸人さんとは全然違ったから。 山本:ナインティナインの掛け合いとか、よゐこのシュールなネタみたいな武器もなかったし、正統じゃなかった。「生放送のなかで一言かましてやろう」みたいな。 加藤:亜流も亜流だし、ちゃんとしたレールに乗って「皆さんに笑っていただく」ことを狙っていたわけではない。……でも、『めちゃイケ』がなかったら、俺たちはなにもないと思うよ。こうやって対談できていることもない。