「日本人じゃない」と突きつけられた過去――水原希子、自分らしさとの葛藤の先に
「自分はみんなと違うってことを周りから突きつけられている感じがあった」――両親が日本人でない「ミックス」という出自に、コンプレックスを抱えていたファッションモデルの水原希子。メークアップアーティストとしても活動する僧侶でLGBTQ当事者の西村宏堂を迎え、コンプレックスの乗り越え方、本当の美しさ、そして自分らしさとは何か、本音で語ってもらった。(文:吉田けい/撮影:稲垣謙一/Yahoo!ニュース オリジナル RED Chair編集部) (※2020年11月の再配信です)
観音様だってオシャレしている
水原:「ファッションモデルとして、ある意味“美しさ”を売る業界でやってきたんですけど、“美しさ”ってなんだろうって思うことがあって。時代によって、美しさの基準なんてどんどん塗り替えられていくし、外見が美しくても内面はそうじゃないこともあるし。宏堂さんはミス・ユニバースの各国代表のメークを担当しているじゃないですか。世界一の美を競う場って、何が美しさの基準になるんですか?」 西村:「現場は、みんな死ぬ気で挑んでるから、もうバッチバチなんです。そんななかで、スタッフに気遣いを見せてくれたり、現場の雰囲気を華やかにしてくれたりするような人が、やっぱり高いポイントを獲得していると思います。そういう意味では、私たちを美しい気持ちにさせてくれる人が、美しい人なのかも」 水原:「そういった内面的な美しさって、人としてとても大切なものだし、いまの時代だからこそ、相手を受け入れる気持ちとか思いやりが求められていると思います」 モデルの仕事では、高価なハイブランドを身につけることもある。自分が「高価なものにこそ価値がある」という概念を発信しているように感じ、美しく着飾ることに疑問を感じていた時期があった、と水原は言う。
水原:「着飾るよりも、自分の体に馴染むものが着たいなって……。でもいま、心の底からオシャレがしたい。オシャレすることで内面が変わるってこともありますよね」 西村:「私は、小さいときから外見にコンプレックスがあったんです。でも、メークに出会って、自分の顔がすごい変わることを知って。メークをしたら元気がでて、いままでできなかったこともできるように思えたし、実際にできたと思います」 水原「やっぱり、ちょっとメークとかオシャレするだけで、力をもらえますよね。自分の思うままにオシャレすると、本当に心が晴れます。それってファッションの力だなと。高価なものじゃなくても、自分に合うものを着るのって楽しいし、ファッションは多様ですよね」 西村「観音様だってオシャレしてますよ。冠まで着けて、荘厳に着飾ってて、もうキラキラ。華厳経というお経には、観音様のように着飾っていて、内面も素晴らしくて、すごい力をもっている人こそ、周りに影響を与えられるとあります。だから、私も着飾るべきだ、と」