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遺骨で森を再生する「循環葬」
■遺骨で森を再生する「循環葬」 小池友紀|at FOREST(地域部門賞・兵庫) 従来、墓といえば霊園や寺の一画に墓石を立て、親から子、子から孫へと受け継がれていくのが一般的だ。しかし、家制度の崩壊や核家族化、未婚者の増加などにより、無縁化する墓が増えている。新規で一般墓を契約する割合は全体の2割というデータもある。 そうしたなか、墓の選択肢として選ばれるようになってきているのが樹木葬だ。自然に還りたいというニーズや後継者が不要という理由が背景にある。一方で、シンボルツリーがあるだけで、プレート型の墓標が画一的に並び、遺骨はいずれ合祀墓に移動され土に還らないものが多いため、従来の墓と変わらないという見方もある。 そこでat FORESTが提案するのが「循環葬」だ。墓の拠点は寺院の森の一画。遺骨をパウダー状にし、それを掘り出した土に混ぜて埋葬する。神戸大学・土壌学の助教監修のもと行う循環葬は、遺骨が土壌の一部となり、樹木の栄養になる。人の命を循環させることで森林の保全・再生にもつなげていくというコンセプトだ。遺族らにとっては、埋葬された森で時間を過ごすことが墓参りになるという新たなスタイルだ。代表の小池友紀は「森林浴が楽しめるデッキやベンチを用意しています。お墓参りの体験も変えていきたい」と話す。墓標を立てないことで森の風景を守ることができるほか、埋葬数が限定されないため、契約数増加に伴う墓地の拡大も不要だ。日本は国土の約7割が森林という森林大国だが、林業の衰退や管理者の高齢化などにより、適切な管理がされていない放棄林が増加している。at FORESTはこの放棄林問題に死をかけ合わせ、自然資本の保全に取り組んでいる。 2023年夏から大阪府・能勢町の能勢妙見山でサービスを始めており、150人以上が循環葬の地である森を訪れた。売り上げの一部は拠点の森林保全に還元し、契約者が増えれば増えるほど森が豊かになる。今後は、さまざまな寺とパートナー契約を結び、事業を拡大していく予定だ。 こいけ・ゆき◎広告クリエイティブの世界で15年活動。さまざまな企業のコピーライティング、コンセプトメイキングを手がけるなか、両親の墓の引越しをきっかけに循環葬を創案。2022年at FORESTを設立。
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