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原発廃炉に挑む「ダイヤモンド半導体」
■原発廃炉に挑む「ダイヤモンド半導体」 星川尚久|大熊ダイヤモンドデバイス 生成AI(人工知能)や電気自動車の普及に伴って需要が急増している半導体。現在はシリコンを使った製品が主流だが、基板にダイヤモンドを使った半導体の実用化を目指すのが、大熊ダイヤモンドデバイスだ。 ダイヤモンド半導体は、既存の半導体と比べ、高出力、高周波、低消費電力、さらには、高温と放射線への高い耐性をもつ。原発、宇宙、次世代通信での活用が期待されており、同社の調査では、それぞれのダイヤモンド半導体のSAM(獲得できる市場規模)を380億円、7700億円、2.5兆円と推計している。 目下、大熊ダイヤモンドデバイスがターゲットにしているのは原発だ。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉で、デブリ(溶融燃料)を取り出す際の中性子線量計測で採用を目指す。シリコン製の半導体では壊れてしまうが、ダイヤモンド半導体は放射線への耐性をもつため、壊れにくい。製品の実用化に向け、福島県大熊町に世界初の量産工場を建設する予定で、2026年度頭にも稼働を開始する計画だという。代表の星川尚久は「我々の強みは、世界で唯一、ダイヤモンド半導体の垂直統合製造ノウハウを保有していること。大手が参入しても数年は追い付かれない」と自信を見せる。資金調達も進めており、Coral Capitalやグロービス・キャピタル・パートナーズからの出資、復興庁や内閣府からの補助金などで累計約20億円を調達した。 同社は、北海道大学と産業技術総合研究所の研究成果がベースとなっている。東日本大震災による福島第一原発での事故発生後、高温かつ高放射線環境下に耐えうるダイヤモンド半導体へのニーズが急速に高まったことから、現在取締役を務める金子純一を筆頭に国内の研究機関と研究開発を開始。事業化のメドが立った22年に創業した。「東日本大震災があったからこそ培った十数年のアドバンテージにより、世界の覇権を握ることができるのではないか」(星川) ほしかわ・なおひさ◎北海道大学在籍時に起業し、6期連続で黒字達成ののち事業売却。並行して2016年よりダイヤモンド半導体の研究を始め、22年に当社を創業。内閣府や総務省等、総額14億円超の研究資金獲得実績あり。